「久遠ちん今日一緒に帰ろー」


ちょんちょんと肩をつついてきたあっちんは、振り向いた私に開口一番にそう言った。
中学最強のバスケ部に所属する彼に休みなんてそうそうないはずだ。
長い髪の毛が目にかかっているのを払ってやりながら、私は二つ返事で頷いた。

まあ、人間いつか限界ってもんが来るでしょう。
今日くらい甘やかしてあげたっていいよね、うんうん。


「でも私毎日日誌書いてるから、ちょっと遅くなるよ」
「別に問題ねーし。授業終わったら久遠ちんのクラス行くから」
「わかった。あ、でもちゃんと休むって連絡入れときなよ?」
「えー・・・めんどい」
「あとで怒られても知らないからね私」


背後から抱きついてくるあっちんを引きずりながら足を進める。重いんですけどちょっと君。
温かい飲み物を買おうと自販に向かっていた途中なのだ。


「何買うの?」
「んー・・・コンポタにしようか紅茶系にしようか迷い中ってあああ!?何勝手にボタン押してんの!?」
「コンポタとか家でも粉入れて作れるじゃん。無駄金ふせいでやっただけだし」
「なに開けてんのなに飲んでんの、あっちん自分が飲みたかっただけでしょ」
「そうともいうー」
「そうとしか言わん」


一気に半分くらい飲まれた午○の紅茶を引ったくり、自分も口をつける。
温かいそれが胃の中に入っていく感覚がした。ほんと最近寒くてかなわないよね。
ものめずらしそうに見てくるあっちんに、まだ飲みたいの?と聞けば首を横に振った。
そんなにジロジロ見られると飲みにくいんだけど。


「久遠ちんさぁ」
「お?」
「彼氏いたことある?」
「それ聞いたらいけない質問だった」
「うわ可哀想」
「それはもっと言ったらいけない言葉だった」


大袈裟に肩を落とせば、ごめんって〜と軽い口調で謝られる。誠意がこもってないよ誠意が!
ふん、と鼻をならして紅茶を飲み干す。
間接キスとか一ミリも気にしないんだねーという間延びした声に、それはあっちんもじゃんと思いながら空き缶を投げれば、それは綺麗な弧を描いてゴミ箱の角に当たった。


「へったくそー」
「うるさいな、一緒に帰ってやんないよもう」
「わ、ごめんごめん」


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -