誰もが羨むような美貌と豊富な胸を兼ね備えた絶世の美少女を前に、ちなは息を吸い込んだ。
ギリィ、と歯軋りをする音が聞こえる。ちな、あんたじゃどうやっても桃井さんには勝てないと思うよ。まああたしなんか挑んでも完敗だし、そもそも挑むなんてことはしないんだけど。

昼休憩、大・・・青峰君のことでお礼がしたくて、と私の好きな炭酸ジュースを持ってきてくれた桃井さん。
ざわめくクラス(主に男子)に、初対面のちなは彼女の完璧なまでの外見に悔しそうに顔を歪めているのだ。だからちな、あんたじゃどうやったって以下略。


「わざわざこんな、いいのに。ていうか私なにもしてないし・・・」
「ううん!私は半分以上久遠ちゃんのお陰だって思ってるの!だから受け取って」
「いや半分以上征くんのお陰でしょ」


大袈裟に話を盛る、ていうかそもそも盛る話すらないのになぁと思いながら、だけど引き下がらない桃井さんに折れてありがたくジュースを受け取った。
青峰氏もさ、こんな良い幼馴染みもって幸せだよね。うん、美味しい。

ありがとうと笑いながらジュースを飲む。
視線をずらせば、なにやらバスケの事について話してる青峰氏と珍太郎の姿があった。
あの二人だけで話をするなんてことは、結構珍しいことだ。
割って入り込んでからかってやりたいけど、バスケの話は私にはわからないからやめておく。

向かいに座っていたちなが、桃井さんの座る椅子を用意してそこに座らせてあげている。
こういう気遣いが出来る女子っていいよね。ちなみに私は出来ません。


「桃井さん、だっけ」
「あ、はい!あなたは久遠ちゃんの友達?」
「まあ一応。佐藤千夏です。よろしくね」
「よっ、よろしく!!」


姉御肌のちなに怖気づく様子もなく、桃井さんは嬉しそうに笑った。


「で、こいつ、青峰君の退部処置撤去になんか貢献したの?」
「うん!雨の中、大ちゃ・・・青峰君を走って探し回ってくれてたの!」
「・・・それって貢献したことになるの?」
「直接は貢献してないかもしれないけど、やる気を失いかけてた青峰君を呼び戻してくれたって、私は思ってるから!」
「ふーん・・・」


笑っているのか笑っていないのかわからない顔で、ちなは私を見た。なんなのよ、もう。
呼び戻したくらいでジュースなんか貰ってんな、てか?私だって一応断り入れたもん、でも受け取ってほしいって言われたんだもーん。

べ、と軽く舌を出すと思いっきり叩かれた。何故。


「久遠って青峰君のこと好きなの?」
「えええっ!?」
「はぁ?」


そうなの!?と身を乗り出してくる桃井さん。
いやいやいや、ないでしょ。
首を横に振れば、なんだーと残念そうな顔をされた。何故。


「大ちゃんの彼女が久遠ちゃんなら、私すごく嬉しいんだけどなぁ・・・」
「なぜ」
「だって、大ちゃんの家近いから、いつでも会えるかもしれないし!」
「同棲設定・・・」


桃井さんはどこか抜けている。
アドレス交換しようよ、と何気なく言ったちなの言葉に大いに喜んでいる桃井さんを尻目に、私は未だ会話している青峰氏と珍太郎を見た。


「・・・青峰氏、将来尻の軽い金髪の女の子引き連れてそう」


ケータイを落としそうになりながら、桃井さんはいつもより大きな声で笑った。

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