「よかったっスね青峰っち!!」


嬉しそうに目を細めながら青峰氏に抱きつくりょた君。
そんな微笑ましい光景を見つめていると、私まで口角が上がってくるよ。イケメンて本当罪よね。
濡れた髪の毛を征くんから受け取ったタオルで拭いていると、横から子テツが心配そうに顔を覗き込んできた。


「随分と濡れてますが、大丈夫ですか?」
「うん、全然。青峰氏が自分の服かぶせてくれてたし、まあ、風邪は引かなっくしゅん!・・・引かないでしょう」
「どこがですか」


呆れた風にため息をつく子テツ。でもその瞳は変わらず心配そうだから、もう一度大丈夫だよと笑っておく。本当に、ただ少し寒気がするだけなのだから。

万引きをされた店と、そして帝光の理事長まで言いくるめてしまった征くんは、本当にかっこよかったと聞く。これは桃井さんが言ってたことだ。

"もうね!本当にさすが赤司君って感じだったんだから!"

なんとなくその時の征くんを想像してみたら、瞳孔をかっぴらいて店長や理事長に迫る彼の姿が浮かんで咄嗟に首を振ったのはつい先ほどのことだ。
怖い、ありそうで怖い、てか実際そうだったに違いない。
それをかっこいいと言える桃井さんもそれはそれで疑ってしまう。

話は変わるが、私は今帝光バスケ部が常日頃使っている体育館にいる。
青峰氏の復帰の連絡が入ってから、ただずるずるとバスケ部の中に居座ってしまったのだ。
今日の練習は時間も経ってしまったためか、自主練ということに収まったらしい。
体育館の中に入ったらあちこちから視線を感じたけど、征くんが隣を歩いていたためかみんながみんな納得したような顔をして各々の練習に戻っていった。

・・・バスケ部の中での私のイメージとやらを、少し聞いてみたくなったのは秘密です。


「ふあ、」


あ、またくしゃみ出る。
口元に手を持っていったところで、背中にどすんと何かが突進してきた。
香水の香りがする。

あ、これは、


「久遠ちゃん!」
「なにりょた君。君のせいでくしゃみ引っ込んじゃったよ」
「え、いいじゃないスか」
「よくないよ!くしゃみ出ないのが一番苦しいんだよ」
「そこまでっスか!?」


察したとおりりょた君が突っ込んできていた。
もっと体格の差考えろっての、重いっての、体重かけんなってのおお!!

重い重い!と喚いていると、そうだよ黄瀬ちんどきなよ久遠ちん辛そうー、とあっちんが呟いた。ん、いや、あなたも常日頃私にこうやってきてますけどね!!


「もうオレ久遠ちゃん大好きっス!青峰っちの件、どうもっした!!」
「いだだだだっ!いっ、重っ・・・!ちょちょちょわかったから離れりょた君!」
「つかなんで黄瀬、てめぇがお礼なんか言ってんだよ。つーか抱きついてんじゃねぇよ離れ」
「い゛っ!?ちょ青峰っち今全力で蹴ったっしょ!?」
「いいぞ青峰もっとやってやるのだよ」
「ミドチン顔怖いけど。でもまぁオレも加勢してやんねーこともないよ?黄瀬ちんいびり」
「いびりどころか暴力入ってるっス!赤司っちぃ助けて!」
「・・・許可しよう。黒子もイグナイトかましてやれ」
「了解です」
「えええええええええええええええええ!!?」


袋叩きにされるりょた君の腕から逃げ出して、桃井さんの元に駆け寄る。
なんなのあいつら、とこぼせば桃井さんは苦笑して、久遠ちゃんは本当に人気者ね、と言った。

うん、意味わからん。

それから騒ぎを聞きつけて来た造ちゃんと一緒に帰ることになり、慌しい一日は幕を閉じた。

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