「久遠ちゃん!」


今日は朝からなんだかツいてない日だなぁと感じた。
珍太郎が毎朝見ているおは朝でも私の星座は最下位だったし、そのせいか知らないけど家の時計が止まってて何分か遅刻した。慌てて家を出たせいで今日必要な教材を忘れるし、さっきの昼休みなんかは購買に行った私を容赦なく押しつぶす人の群れ。

やんなるよ、もう。
愚痴をこぼせば、ちなは紙パックジュースを飲みながら愉快そうに笑った。
そして迎えた今日ラストの授業。
このままなにも起こりませんように、と珍太郎から受け取った私の今日のラッキーアイテムらしいクマのストラップを握り締めた時、泣きそうな顔の桃井さんが我がクラスに飛び込んで来たのだ(それよりなんで珍太郎は私のラッキーアイテムを持っててくれてたのか不思議)。


「助けて久遠ちゃん!大ちゃんが・・・!」


なにか都合が悪かったのか、いつもなら懲りずに私にちょっかいをかけてくる青峰氏の席は朝から空席だった。
今日は・・・あいつは休みなのだよ、と歯切れの悪い珍太郎に首を傾げたのは記憶に新しい。
大方、寝坊でもしてそれで面倒臭くなって休んだのかな、とかそんなことを考えていたのに、どうやら違うらしい。

血相を変えた桃井さんの様子に、知らず知らずのうちにストラップを強く握り締めた。


「万引き事件起こして、退部させられちゃうかもしれないの・・・!」


珍太郎を見る。
大きく目を見開いた彼も、理由はしっていても処置の詳細までは知らなかったらしい。


***


「誤解だ」


征くんはきっぱりそう言った。
子テツも小さく頷いている。私を後ろから抱きしめるあっちんもそれは有り得ないよね〜と間延びした声で言う。りょた君は青峰氏に濡れ衣を着させたどこかの誰かに憤慨していた。

放課後、急いで征くんの元に向かった。
征くんは一瞬驚いた顔をした。何故私が知ってるのかって。桃井さんが「無意識に久遠ちゃんに伝えなきゃって思って・・・」と泣きそうな顔をするもんだから、桃井さんは悪くないよと笑っておいた。

本当は、部内で事を収めるつもりだったらしい。


「青峰もそんなことはしていないと言っているし、大方万引きに失敗した連中に無理矢理物を持たされたとかそんなところだろう」
「青峰氏不器用だもんね。逆ギレとかして店主怒らせたんじゃない?」
「・・・当たっているのだよ」


推測が当たり、私はドヤァと笑みを浮かべた。
久遠ちんその顔うざいよ、と上から私の顔を覗き込んだあっちんが言う。うるさいやい。


「で、青峰氏は今どこにいるの?」
「監督も青峰っちの事は信じてるんスけど、万引きしたって事だけを伝えられた理事長が面目丸つぶれだ、とか言って今は自宅謹慎っス」
「理事長クソヤロウだね」
「ですね。イグナイトかましたいです」


相棒である青峰氏を悪く言う理事長に静かに怒っている子テツが、イグナイトを構えた。
オレも行きたいっス!あのジジイ!と同じく怒っているりょた君。
桃井さんは不安からかまだ泣きそうな顔をしている。馬鹿だなあ、征くんがそんなこと許すわけないのに。


「で、どうするの?征くん」
「まあ、やることは決まってるさ。誤解を解いて・・・ついでに青峰を悪くした奴ら全員を懲らしめてやろう」


イタズラっぽく笑う征くんに笑い返す。
やられたらやり返す、倍返し精神ですよね、オーケーです。

凶悪な笑みを浮かべているであろう私に、珍太郎は一言。


「征くんってなんなのだよ」


今それ関係なくね。

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