合宿が終わって、造ちゃん達三年生の最後の試合も終わって、彼らはもう引退だそうだ。
全中二連覇。
なにがすごいのかよくわからないけど、若干の寂しさとそれ以上の嬉しさを含めた声音で造ちゃんが喋るものだから、私も黙って相槌をうつ。

引退してから・・・いや、合宿が終わったときくらいからか、造ちゃんは昔みたいに用もないのによく私の部屋に来るようになった。
何故か理由を聞いたところ、渋い顔をしながら「そりゃあお前、年頃の女の部屋に気軽に入れなかったんだよ」とよく分からない返答をいただいた。
本当に訳が分からなかったから、どういうこと?と聞き返しても造ちゃんは呆れた顔をするだけでそれ以上は何も言わなかった。
ただ一言、「気にしねぇでよかったのかよ、クソ」と忌々しげに呟いて私の頭を乱暴に撫でた。

痛かったけど、懐かしさで胸が一杯になった。


「とりあえず、おつかれ?」
「おう」


勝手に私の机の中を物色しながら、お前なんもねぇなと関係ないことを言う造ちゃん。
私は作ってきた彼の分のココアを一気に飲み干した。


「おまっ、なにオレのココア飲んでんだよ!」
「いたっ!造ちゃんが勝手に机の中あさるからでしょ!」
「あぁん?お前の机の中なんか見たってなんも困らねェだろうが。ココア入れなおせ」
「だったら見なくたっていいでしょうが・・・」


呟きながら、コップを持って一階に向かう。
何故か一緒に降りてきた造ちゃんを気にせずリビングに入れば、なつかしっと声を上げた。
そうだね、中学生になってから滅多と来なかったもんね。

ココアを作って渡す。
そのままなんとなくリビングでテレビを見たり、バスケの話をしたりして過ごした。
帰ってきたお母さんは、造ちゃんを見て大いに喜んだ。造ちゃんはイケメン(お母さん曰く)だから、イケメン好きのお母さんはよく来たわねぇとエプロン姿でキッチンに向かう。
征くん達を連れてきたら、卒倒しちゃうんじゃないかなお母さん。


「久遠」
「んー?」
「あいつらのこと、頼むぜ」
「は?」
「赤司たちだよ。あいつらは強すぎるからな、それが仇になるかもしんねェ」
「・・・よくわかんないんだけど」
「久遠、お前な、自分が思ってる以上にあいつらはお前のこと気に入ってるんだぜ?」
「バスケと日常は別だよ」


そうだけどよ。

唇を尖らせて頭の後ろで腕を組んだ造ちゃん。
クッキーをひとつつまんで口に押し付ければ、もっと普通に食わせろと言いながらもそれを食べた。


「造ちゃんの言いたいことはわかんないけどさ、征くんたちのことは好きだよ」
「・・・まぁ、いーや」
「なんかごめん」
「お前ほんと理解力ねぇわ」
「だからごめんって」

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