売店は大賑わいだった。
前に青峰氏や珍太郎と来た時もそうだったけど、ごった返す人並みに身長が平均に満たない私は倒れてしまいそうだ。
だがしかし!今日寝坊して弁当を作ることが出来なかった私にはなにかしらのものを買わなくてはいけないという使命があるのだ!

足を踏まれて思わずいたっ、と声を出してしまう。
でもこの人ごみだとそんな声を気に留める人なんていない悲しい。
こういうとき青峰氏やあっちんだったら背の高さからして不利になることはまずないだろうから、ていうか気にせず突き進むんだろうな・・・
珍太郎は賢いからどうせ前もって予約とかしとくんだろう。
子テツはお得意の姿くらましでちょちょいのちょい、征くんに至っては歩くだけで花道ロードが出来そうだ。

・・・じゃあ、りょた君は?


「あ、久遠ちゃーん!」


なんか青峰氏たちと来た時よりすごい人だなと思ったのは貴様のせいかりょたぁ!!
たくさんの女の子を引き連れて(ていうか引っ付けて?)りょた君は少し困った顔で私に手を振った。
くそう人前で恥ずかしい奴だ。手を振り返さないなんて彼が寂しがることはできなかった。なんて優しいんだ私は。
なんて、ぼーっとしていると誰かにぶつかって体がよろめく。

あ、やば、こける。


「っ、いたっ、」


ドジっ娘か。
自分で自分につっこみたくなるようなコケ方をしてしまった。
起き上がろうにも、人が多すぎて中々、っていうか逆にまたこけそうだし!?
もう売店とか来てやんない!

生理的な涙が出そうになった時、大きな手が私の腕を掴んで引き上げた。


「っも、なにしてんスか久遠ちゃん!!」
「、りょた君」
「ばか!ボーっとしてると危ないでしょ!?」
「う、ご、ごめん」


いつの間に群がる女子を振り切ったのか、少し汗をかいたりょた君の顔は心配そうに歪められていた。


「もう、久遠ちゃんが傷でも負ったら青峰っちや緑間っちが憤慨するっスよ!」
「いや逆に喜びそうだけど」
「その場ではね。でも後からオレが怒られるんス!なんで助けなかったんだーって」
「・・・いや、でもりょた君見て見ぬフリだってできたんだよ?」


きょとんとした顔で、それからりょた君は目を吊り上げて怒った。
そんなことできるわけないじゃないっスか!と。


「青峰っち達がどうこう以前に、オレだって久遠ちゃんのこと大切に思ってるんスからね!」


気づいたら体が動いてたなんて、他の女の子にはない貴重な体験をしたそうだ。
さりげなく嫌味を織り交ぜてきたりょた君に、私は苦笑しながらお礼を言った。

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