"明日、部活がオフなんだが・・・おは朝のラッキーアイテム補給に付き合ってくれないか?"


疑問系ながらも有無を言わせない空気をまとった珍太郎に、征くんかよと思いながら渋々頷いたのは昨日の事。
珍太郎だし別におしゃれに凝ることないかー、と適当に服を着て家を出た。
・・・まあ、普段からそんなに凝ってるわけじゃないんだけどね。

待ち合わせ場所に、少し早めに歩く。
きっと珍太郎のことだから、時間にうるさいはずだ。
そんでもって、きっと待ち合わせの時間より早く来ているだろうから。
小銭の入った小さな財布をポケットに入れ、スマホを手に道を進む。

見慣れた後姿に、思わず目を丸くして一瞬立ち止まってしまった。


「・・・あっちん?」


小さな小さな私の声をあのデカブツは聞き取ったのか、ゆるりと振り向いて私を見つけると小さく手を振った。


「久遠ちんじゃん、なんかひさしぶりー」
「久しぶり!なにしてるの?」
「お菓子の買出し行こうと思ってたのー。久遠ちんは?・・・おめかしせずにどこに行こうとしてんの?」


痛いところをつかれた。
歳のわりにメイクとかしないんだねー、と、嫌味なのかそうじゃないのか分からない言葉に苦笑しながら、珍太郎の事を伝える。
しばらく考え込んだあっちんは、オレも行くーとゆるい口調で言った。



「・・・で、なんで紫原がいるのだよ」
「偶然会ったんだよ。お菓子の買出し行くって言ってるし、まあ仲良く買い物しよ!」
「こいつといると変に目立つから嫌なのだよ・・・」
「それミドチンに言われたくねーし」


確かに、と笑いながら三人で歩き出す。
背の高い二人は、平均より低い私を気遣ってか歩調はゆっくりだ。
うん、気遣いのできる男子はモテるよ。
いい友達を持って鼻が高いなあ、と思わずニヤけてしまった。


「これは・・・!」


何故かゲーセンに来た私たち。
ぬいぐるみのクレーンゲームの前で立ち止まる珍太郎の後ろからそれを覗き込み、私はあっちんを見上げた。
キラキラと目を輝かせている珍太郎に、あっちんがほしいの?と首をかしげる。
だっ、断じて欲しいなどと思ってはいるない!・・・矛盾した返答に、私はやれやれと財布から小銭を出して投入した。

こう見えて、クレーンゲームは得意だったりするのだ。

慣れた手つき(自分で言うのもなんだけど)で操作し、お目当てのぬいぐるみ(亀のぬいぐるみだった。渋い)を掴み上げる。
一回で手に入れたそれを、二人はしばらく唖然として見つめていた。


「いらないの?」
「っいる!のだよ・・・」


差し出した亀のぬいぐるみを大事そうに抱え込み、若干微笑んだ珍太郎。
図体はでかいくせに、やたらと可愛げのあるその仕草に、私は一瞬自分の姿を見直してため息をつきたくなった。なんてズボラなんだ。


「金を・・・」
「いいよ、誕生日プレゼントにしとく!」
「とっくに過ぎているのだよ」
「当日知らなくてなにもあげられなかったし」
「・・・ありがたくいただく」
「久遠ちんオレにもお菓子とってー」
「いいけどお金払いなよ?」
「えー!ミドチンにはただで取ったのに」
「あっちんには普段からお菓子あげてるでしょ!」
「不平等だし!」


文句を垂れながらも小銭を出すあっちんに微笑んで、しばらくゲーセンで楽しい時を満喫した。

たまにはこういうのもありだな。

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