「ふう・・・」


書き終えた日誌を閉じて、窓の外を見る。
季節の関係もあり、この時間帯でももう薄暗くなってきた。
それでも相変わらず運動部は活発に活動してて、外部の掛け声はこの教室まで響いてくる。
一人残る教室に響くその声は、意外と好きだったりする。自分が頑張ってるわけじゃないのに、青春してる気分になれるから。


「・・・久遠さん?」


呼ばれて振り向くと、部活途中なのか汗をかいた子テツが教室の入り口に立っていた。
やっほー、と手を振りながら考える。
なにしに来たのかな。子テツの教室は私の教室からは遠いはず。忘れ物でも取りに来た途中なのかな。・・・まあ、どうでもいいか。って結局はそんな結論。


「なにしてるんですか?」
「特になにも。子テツは?」


手に持ったタオルで顔を拭き、近づいてくる彼のために適当に椅子を引く。
あ、大丈夫です、と仄かに笑う子テツの体力の無さは合宿のときに見てわかったけど、男の子の意地はすごい。無理強いすることなく私は引いた椅子を元に戻した。
子テツは微妙な位置に立ったまま、私を見下ろして口を小さく閉じたり開いたりしている。


「忘れ物を、取りに・・・来てたんです」
「? そうなの。見つかった?」
「・・・はい」
「子テツ?どしたの?」


少し様子がおかしい。
具合でも悪いのかと思って手を伸ばせば、優しく握り降ろされた。

大丈夫です、あの、

申し訳なさそうに眉尻を下げる彼に、なんだか困惑してしまう。


「・・・なんとなく、久遠さんがいるかと思って・・・覗いてみたんです」
「え、あ・・・あー!そういうことか。基本毎日五時半くらいまでいるよ」
「はい。・・・忘れ物してて、よかったです」
「なんでー?私に会えたから?」


ニヤニヤと冗談ぽく子テツを肘でつつけば、真面目な顔で頷くもんだから、なんだか恥ずかしくなって少し距離を置いた。
なんだか、今日の子テツはやけに素直だ。普段から頑固ってわけじゃないけど。


「・・・」
「・・・」


少しの沈黙が流れる。
部活動に励む生徒の声が、やけに大きく聞こえた。

じゃあ、そろそろ戻りますね。

子テツが言いながら片手をあげ、私もどもりながら頑張ってと伝える。
合宿のときに倒れてしまった子テツを思い出して、教室を出る彼にもう一度声を掛けた。


「あまり無理しちゃ駄目だよー」
「僕はそんなにヤワじゃありませんよ」


力こぶを見せる子テツに笑って、私も帰り支度をする。
青峰氏と珍太郎の他より一回り大きな机を見て、あいつらが力こぶを作ったらどんな盛り上がりなのかなと一人考えながら教室を出た。

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