「今日も頑張ろうね、久遠ちゃん!」


腕まくりをしながら言えば、はりきってるね桃井さん、と小さな笑みが返ってきた。
久遠ちゃんが臨時マネージャーとして合宿に参加して、今日が最終日。
普段から慣れてない仕事をこなしてきたせいか、若干疲れている久遠ちゃんに申し訳なさを感じる。
これを機に、私は彼女ともっと仲良くなりたいと思っていた。
けど実際一緒にいれる時間は結構少なくて、あまり久遠ちゃんのことが知れてない。
文句を言うつもりは毛頭ないけど、だけどやっぱりこのチャンスを逃したくないもん。

一応気合入れのつもりで髪の毛を縛ると、私のその一連の動作を見ていた久遠ちゃんがポツリと呟いた。


「私も髪の毛しばろうかなあ」


これだと思った。
心の中でガッツポーズを作る。


「あっ、じゃあ私がやってあげるよ!ポニテがいい?」
「え、桃井さんやってくれるの?」
「もちろん!」
「じゃあお願ーい!」
「まかせて!」


ふわふわとした久遠ちゃんの髪の毛に触れる。
シャンプーのいい香りがした。


***


「楸さん、桃井、今日はこのメニュー・・・だ・・・」


メニューが書いてある紙を持ってきた赤司君が、久遠ちゃんを見て固まった。
いつもと違う久遠ちゃんに気づいたのかな。
少し誇らしくなって私は笑みを浮かべる。

赤司君?なに固まってんの?

つんつん。
久遠ちゃんが赤司君のほっぺをつついた。
赤司君にそんなことできるの、久遠ちゃんくらいだよ・・・。


「・・・、ああ、いや、すまない。その髪型は桃井にしてもらったのか?」
「あ?ああ、うん。桃井さんうまいよねぇ」
「そうだな。・・・とてもよく似合ってるよ」
「ありがとう」


微笑んだ久遠ちゃんは最高級に可愛くて、思わず抱きつきそうになった。
なんていうか、特別可愛いわけじゃないのに、久遠ちゃんの可愛さは私のツボ!

じゃあ練習を始めようか。

メニューを渡され、私達マネージャーがしなければいけないことを把握する。
最初はいつもランニングだから、終わるまでにドリンクを作っておこう。

久遠ちゃん、と声をかけようとして振り返れば、久遠ちゃんの髪の毛をつつきながら楽しそうに笑う大ちゃんの姿。
そして、そんな久遠ちゃんの周りにはどんどん人が集まっていった。

後ろから覆いかぶさるように抱きつくむっくん。
眼鏡を押し上げながら少し頬を赤らめているミドリン。
馬子にも衣装だな、と虹村先輩(少し意味が違うと思うけど)。
めちゃくちゃ可愛いっス!ときーちゃん。


「とても似合ってます」
「お、子テツ。ありがとー」


優しげに目を細めるテツくん。

・・・久遠ちゃんは本当に、人気者だなぁ。

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -