ダムダム。
ボールをつく音が響く。すぐにお腹がすいてくるオレは、休憩の少ない練習に、それでも今日は自分でもわかるくらいに機嫌がよかった。

何故かって、そりゃあ、心当たりは久遠ちんがいるから。これしかない。
久遠ちんは好きだ。お菓子くれるし、関わりやすいし、性格もサバサバしてるから一緒にいてめちゃくちゃ楽。

合宿。
臨時マネージャーとして参加することになった久遠ちんは、意外にもよく働いてくれていた。
元主将が幼馴染みだけあって、バスケのことも軽く知っていたらしい。
ドリンクを持ってかけてくる久遠ちんに、オレは汗だくのまま覆い被さった。


「うわっ、ちょ、あっちん邪魔!そして重い!」
「んー?しんどかった」
「おうおう、しんどそうだった。おつかれー」


作ったドリンクを頬にあてがわれる。オレはそれを受け取って、のどを潤す。
いつもの人が作ったドリンクより、おいしい気がした。

はいよタオル、とふわふわで真っ白なタオルを顔面に投げてよこし、久遠ちんは他の部員のところに駆けていった。


「ご機嫌だな紫原」


赤ちんが口元にやわらかい笑みを浮かべながら、久遠ちんから受け取ったであろうタオルで汗をふく。
ボールを人差し指の上で回して、んー、と気のない返事をした。


「彼女にマネージャーを頼んで正解だったな」
「理由はなんとなくわかるけど、なんで?」
「紫原が思っている通りさ。かくいうオレだって、いつも以上にやる気が出ている」
「赤ちんのやる気出させるとか、久遠ちんすげー」


オレらレギュラーだけじゃなく、他の部員にもドリンクとタオルを配りに行く久遠ちん。
それが当たり前のことだけど、最近はオレたち“キセキの世代”とそーゆー関係になることを狙ってマネになったような胸くそ悪い女の件もあったから、久遠ちんの行動はすごく新鮮なものに思えた。


「久遠ちん、正式にマネージャーすればいいのに」


ぽつりと呟いたオレの言葉を、赤ちんはきちんと拾って そうだな、と微笑んだ。

そしたらきっと毎日楽しく部活できるのに。

あー、それよりお腹すいたな。
久遠ちんはきっとお菓子なんて今は持ってないだろうけど、オレの足は勝手に彼女のもとに歩いていく。

久遠ちんお菓子ないー? あるわけないと苦笑する久遠ちん。
部活中に食おうとするなと顔をしかめるミドチン。


「後半、始めるぞ!」


赤ちんの凛とした声が響く。


「お、始まるじゃん。がんばー」


あまり気持ちのこもってなさそうな激励に、オレとミドチンは顔を合わせて指定の位置に向かった。


「じゃあ楸さん、この笛を三十秒ごとに吹いてくれないか?」
「ヘマすんなよ久遠」
「うるっさいな造ちゃん。オッケー、三十秒ごとね」


大きく息を吸い込んで久遠ちんは笛をくわえる。
ピヒョロ、と頼りない笛の音と共にオレ達部員はずっこけそうになりながらも走りこみを始めた。

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