臨時マネージャーってことは、ジャージとかそこら辺が必要だよね。
家にある服を思い浮かべながら、店内を歩く。
ジャージならあっても困らないし、買っておいてもいっかと決断した結果、私は今ユニ○ロにいる。

赤司君の頼みを承諾した以上、まぁ、決めたからには頑張らないとね。
お母さんにその旨を伝えたときは、ひどく喜ばれた。
あのめんどくさがりな久遠が、と目尻に涙を浮かべたお母さんを思い出して、もう少しなにか習い事でもしておけばよかったのかなとうっすら考えてしまった今日この頃。
でもめんどうだしいーやとすぐに結論出したけど。

そう、私は楽に生きたいんだ!!


「お?久遠じゃねーか」


回想に入り浸って思わず拳を握っていると、背後から声を掛けられた。
この声は幼い頃から聞きなれてる。でも、最近は滅多と聞かない声。
同じ学校内にいても、そんなに顔を合わせない、私の幼馴染み的存在。


「久しぶりだな」
「造ちゃん!」
「せめて修ちゃんとかにしろって何回も言ってんだろーが」


造ちゃんこと虹村修造、帝光バスケ部の、元主将である!

変わらない造ちゃんに、私は嬉しくなって軽く突進した。
危なげなく受け止めてくれるあたり、さすが強豪バスケ部だ。

造ちゃんと私の家は道路を挟んだ向かい側。
親同士の仲がいいから、必然的に一緒にいる機会が多かった私達は、兄弟同然のように育てられてきた。
中学に上がって造ちゃんの部活が急がしくなって、歳差もあり顔を合わせる機会は減ったけど、たまにうちに来て一緒にご飯を食べたりする。
私が他の人よりバスケ部に関わりを持つことに躊躇しないのも、造ちゃんの存在あってこそだったりするのだ。


「造ちゃん、今日は部活ないの?」
「あったけど急遽なくなった」
「なんで?」
「体育館で催し物するんだと」
「へぇ」
「それよりお前、」


臨時マネージャーってどういう事だよ。

すぐ近くにあったジャージを手にとって眺めながら、造ちゃんは言った。


「私が聞きたいくらいだよ。赤司君に頼まれたの」
「ったく・・・お前の名前が赤司の口から出てきたときはビビったぜ」
「そこまで驚くこと?」
「ったりめぇだ。あいつらはオレらバスケ部の中でも一際浮いてるからな」
「ふーん・・・個性的で面白い人たちでしょ?」
「・・・まぁな」


先輩としてはもーちょい礼儀を学ぶべきだと思うけどな。

そう語る造ちゃんも、どこか楽しげだ。
私は少し笑って、一緒にジャージ選んでよ、と造ちゃんの腕を引っ張った。


「まあ、頑張れよ。臨時マネージャー」
「受けたからにはね。真面目にやる」
「当たり前ぇだ。真面目にしてなかったらシバくぞ」
「・・・造ちゃんにシバかれるのは勘弁だ・・・」


久々の感覚を楽しみながら、造ちゃんと店内を回った。

その夜。
真新しいジャージをフローリングに並べて、気合を入れる。
造ちゃんもいるし、あまり不安はないかな。
珍しくアイスを買って家を訪れてくれた造ちゃんと、久しぶりに遅くまでしゃべっていた。

合宿まで、あと一週間。

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