正直、嬉しかった。
嬉しいというかなんというか、とにかくやった!と感じた。
赤司の言う事は絶対だ。きっとこいつも断らねぇ。

そしたら、どんなに辛い合宿でも、きっとおもしれぇもんになる。
そんな確証があった。
だって楸がいて楽しくなかったなんてことは、ない。

テンションが上がったオレは、隣でうなだれているこいつに嬉々として話しかけた。


「おい、どーすんだよお前」
「えー・・・?」
「合宿だよ合宿!」
「なんでそんな嬉しそうなのかな・・・甚だ疑問だよ」


しかめっ面をした楸は、断れるわけないじゃん、と呟いた。
あまりにも嫌そうな口調だから、お前帰宅部なんだからたまにはいーだろこういうのも、と頭を叩く。
帰宅部だよ?帰宅部なんだよ?もっと使えそうな女の子なんてそこら中にいるじゃん、と唇を尖らすこいつ。

きっと赤司は、使えるとか使えないとかそんなことは考えてなかったに違いない。
なんだかんだ言って、あいつだって楸のことを気に入っているのだ。


「まぁ頑張りなよ。そのお腹の贅肉取れるかもよ?」
「ちな・・・他人事だと思って・・・!」
「だって他人事だもん。黄瀬君がいるのは羨ましい限りだけど、あたしも部活あるしね」
「っそうだ、ちなが行けばいいんじゃない!?ほら手馴れてるし!」
「だからあたしも部活あるんだっつってんでしょ聞いてた?」
「・・・ぶ、分身の術とかさ」
「ふざけてんの?」


ケータイをいじっていた佐藤は、呆れたようにため息をついた。
なにがそんなに嫌なのか、未だうーんうーんと悩んでいる楸。

まぁ、楽するために帰宅部に入ったんだし、めんどくせぇんだろうな。
それでもオレは来て欲しいから何も言わねぇ。
言おうが言わまいが、きっとこいつも赤司には逆らえない。


「行っても役に立たないと思うんだけど、切実に」
「別にいーんじゃね」
「いやよくないでしょ」
「オレはお前がいるだけで頑張れっけど?」
「・・・はい?」


佐藤がいじっていたケータイを床に落とした。
顔を上げた楸も目を見開いて固まっている。

・・・オレなんか変なこと言ったか?

首をかしげると、楸は考えとく、と小さく呟いてそっぽを向いた。


後日、楸も合宿に同行することになったことが、部員に伝えられた。
目を輝かせる黄瀬と紫原。
隣にいるテツを見れば、心なしか嬉しそうな顔をしている。

楸ってすげーな。

そう思いながら、テツと顔を見合わせて笑った。

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