灰崎君にあだ名を付けるならさ、なにがいいと思う?

いくつかのあだ名を書き出したルーズリーフから目を離さずに話しかけたけど、なかなか返事が返ってこない。
不審に思って顔を上げれば、目を見開いている青峰氏・珍太郎・ちながいた。ちなに至っては、飲みかけのイチゴオレが口端から少したれている。うわ汚なっ。

ていうか私、なにか変なことを言っただろうか。


「灰崎って、え、おま・・・灰崎か!?」
「この学校に灰崎って二人いるの?」
「灰崎、祥吾のことを言っているのか!?」
「え、うん」
「あんた、いつの間に!?」
「昨日の放課後?」


血相を変えた珍太郎が(何故)、なにもされていないか、無事だったのか、質問攻めにしてくる。
そこまで素行が悪いのあいつ、と思いながら別に大丈夫だったけどーと手を振れば、安心したようにため息をつかれた。
なんだこいつ心配してくれてんのか、可愛いな。


「なんか萎えたとか奪う気なくなったとかさんざん言われたよ」
「ぶっ」
「おい今吹いたの誰」
「げほんっ、いやそりゃよかったな楸。目ぇつけられねーで」
「青峰氏か。よぉし歯ぁ食いしばれ」
「別にお前のパンチなんか痛くもかゆくもっうお!?てめーマジで拳振りぬいてんじゃねーよ!!」
「青峰氏がバカにしてきたんじゃん!!」
「はいはーい喧嘩は止めなよ二人とも」
「みっともないのだよ」


振りかぶった拳は、いとも簡単に珍太郎の大きな手に包まれる。
八つ当たりで珍太郎の腕を制服の上からつねれば、何をするのだよ!と怒られた。
知るか!こっちは昨日からバカにされ続けてストレスがたまってんの!


「それこそオレが知るわけないのだよ!」
「久遠って結構子どもっぽいとこあるよね」
「私悪くないもん」
「ガキかっつーんだ」
「青峰氏に言われたくないもん!」
「んだとてめぇ!」
「だから喧嘩はやめるのだよ!いたっ!?楸、手を振り回すな!」
「だって青峰氏が!」


振り回した手が珍太郎に当たって、珍太郎が怒って、青峰氏が笑って、ちなが苦笑する。
そんなことを繰り返していたから、入り口で私を呼ぶ人に気づかなかった。
いつの間にか静まり返っていた教室。
不思議に思って四人で辺りを見渡す。入り口に、見知った赤の彼がいた。


「あ、赤司君」
「何度も呼んだんだが・・・やっと気づいてくれたようだね」
「え、まじ?それは申し訳なかった!」
「いや、いいよ」


赤司かよ、なんの用だ?と呟く青峰氏に小さく首をかしげる。
席に座っていたちなは、威圧的な彼の空気にまだ慣れていないのか少し緊張気味だ。

そして、歩いて傍まで寄ってきた赤司君は、とんでもないことをさらりと言ってのけたのだ。


「来週の三連休、オレ達バスケ部は合宿があるんだが・・・楸さん、臨時マネージャーとして手伝いに来てはくれないだろうか?」


一拍おいて、一気に騒がしくなる教室内。
疑問系ながらも有無を言わせないような空気に、私はただ固まることしかできなかった。

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