最近はよく、黒子がうちの教室に現れるようになった。
毎時限ごとの十分休憩、いつの間にか楸の机の近くで奴と談笑している水色の頭を見かける。
影の薄い黒子に毎度驚く佐藤だが、近頃はもう慣れたのか軽く手を振るようになっていた。

進んで会話に参加するほうではないオレは、次の教科の準備をしながら静かに奴らの会話に耳を傾けるのだ。


「最近よく来るね、黒子君」


何の気なしに呟いた佐藤の言葉に、黒子は僅かに反応した。そして近くで青峰と喋る楸を横目で見て、そうですねと返す。


「久遠さんの傍は・・・なんていうか・・・とても安心します」
「あー、それ分かるよ」
「佐藤さんも、ですか?」
「でなきゃあんなテキトーなやつと友達やってないって」


ヒラヒラと手を振る佐藤に、黒子は一瞬目を丸くしてから小さく笑った。
無表情が常な黒子の笑う姿に、オレは少なからず驚いてしまう。


「テキトー、ですか」
「そーよ。ねぇ緑間君」
「・・・何故オレに振るのだよ」


確かにテキトーな奴だが、と一応答えながら、オレもまた楸を盗み見た。
青峰とお互いに小突きあっている。奴らはいつも低レベルな争いばかりだ。


「あ、そーいや私まだ青峰氏に120円返してもらってないんだけどー」
「はぁん?返したろがこないだ!」
「うっそだー!絶対返してもらってない!夢でも見てんじゃないの?」
「夢と現実の区別くれぇつくっての」
「じゃあなんで私の記憶にないのさ」
「お前の記憶力の問題だろ」
「・・・絶対返してもらってない」
「・・・絶対ぇ返した」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・自信なくなってきた」
「ほらな」


ほらね、テキトーでしょ。
佐藤はそう言って黒子に笑いかける。黒子は確かにそうかもしれませんね、と再度笑みを見せた。

いつの間にかまた、小突きあいを再開している楸と青峰。いい加減にするのだよ鬱陶しい。


「・・・あ、そろそろ時間なので、僕は帰りますね」
「バイバイ黒子君」
「せいぜい遅刻しないようにしろ」
「はい、では」


黒子は最後にもう一度楸を見てから、小さくお辞儀をしてドアに向かった。


「あ、子テツまたね!いたっ」
「はっ、ざまぁ」
「ちょっと今子テツに手ぇ振ってたのに!」
「知るかバーカ」


はい、また。
聞こえるか聞こえないかくらいの声で返答した黒子に、楸は青峰の攻撃をかわしながらもう一度またねと笑った。黒子も小さく笑った。

・・・黒子の、楸に対する態度に違和感を感じているのは、オレだけなのだろうか。


「いたっ!青峰氏手加減って言葉知らないの!?」


とりあえず、楸の制服についていたゴミをとってやることにしよう。

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