紫と黄色の頭が廊下を歩いていくのが見えた。
きゃあ黄瀬君だ!と目を輝かせるちな。元気だなぁと思いながら朝に買っておいたポッキーの袋を開ける。
すると何故か、同時にあっちんが振り向いてドアの外から私の手元を凝視するではないか。


「・・・ちな、私ちょっと餌付けしてくるね」
「あんたもう紫原君とも仲良くなっちゃったの?早くない?」
「いやかくかくしかじかで」
「かくかくしかじかじゃわかるわけないでしょ。いってら」
「いってき」


ポッキーの袋ごと持って立ち上がれば、あっちんの目が若干輝いたように見えた。
一緒に歩いていたりょた君は立ち止まったあっちんの視線の先を見て、納得したような呆れたような顔をしていた。


「よッス、久遠ちゃん」
「お久しブリーフりょた君」
「ぷっ、なんスかその挨拶」
「流行らせてみなよ。りょた君なら主に女子が真似して使ってくれるよ」
「ねー久遠ちんそれちょうだーい」
「ファンの子達にそんなこと言わせたくないッスよ。ていうか紫っちすでに食ってるなじゃいッスか」
「だよね。もうなくなりそうだよね」


空腹をしのぐための戦利品なのにとぼやけば、申し訳なさを微塵も感じていないあっちんはお礼にまいう棒のゴミをくれた。
お礼にもなってない。私は近くにあったゴミ箱にそれを投げ入れた。入らなかったからわざわざ歩かなければならないことになった。
りょた君に笑われた。悔しかったから足を蹴ろうとしたら、華麗に避けられた。シャラシャラしやがって・・・!


「こんな子がデルモ(笑)だなんて世も末だね・・・」
「デルモじゃなくてモデルッス!ていうか(笑)ってなんだよ!」
「きっとそのまんまの意味だよ。ねー久遠ちん」
「ねーあっちん」
「二人して可愛らしく首を傾げないで!ってゆーかいつの間に仲良くなったんスか!?」


今日もキャンキャンよく吠えるなぁ・・・
和やかな気持ちでりょた君の首を撫でたら、オレは犬じゃないッス!とまた吠えられた。

オレもかまってー、と全体重を預けて私に寄りかかるあっちん。
冗談抜きで潰れそうである。四肢に力を込めてなんとか持ちこたえていると、前方から聞き覚えのある声がした。


「楽しそうだね」
「あ、赤司っち」
「あ、赤ちん」
「あ、赤司君・・・!君のとこの子が私を押し潰そうとしてくるんだけどもっ・・・!」


言うと、くすりと笑う赤司君。
や、マジで冗談じゃないんだけどな・・・!

本気で潰れかけたところで、赤司君があっちんに退けてやれと言ってくれた。
助かった・・・


「楽しげなのはいいことだが、もう少しで次の授業が始まるよ。早く教室に戻れ」
「ほんとだー。黄瀬ちん結局トイレ行ってないじゃん」
「あ!紫っちが久遠ちゃんのクラスに寄り道するから!」
「えーオレのせい?」
「トイレって?もしかしてう○こ?」
「・・・楸さん、もう少し慎みを持ったほうがいいよ」


予鈴が鳴ってそれぞれの教室に帰る。
先生に隠れながらスマホをいじっていると、一件のメールを受信した。
知らないアドレスだ。


"赤ちんに教えてもらったー"


文面ですぐに誰か分かってしまった私は、結構この子と仲良しということなのか。
素早く登録して、返信する。


"またお菓子ちょーだい"


あっちん臭半端ないメール内容に、思わず頬が緩んだ。

明日から毎日ポッキーを買っておこう。

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