「お、楸じゃねーか」
「久遠ちゃん!」


食べかけのアイスを頬張ったまま振り向けば、部活帰りの青峰氏と桃井さんが仲良く並んでいた。
小さく手を振ってくれる桃井さんに、私も手を振り返す。
一口くれと口を開ける青峰氏に、アイスで出たゴミを渡す。すかさず頭をぐしゃぐしゃにされた。
だって青峰氏の一口でかいんだもん。


「お疲れ〜」


自分でも気持ちのこもってない労いだなと思っていれば、お前それ思ってねぇだろと青峰氏に突っ込まれた。む。
コンビニの明かりに集まってくる虫を手で払いながら、私は青峰氏から返されたゴミをゴミ箱に入れる。良い子だからね。

桃井さんいる?とアイスを差し出せば、異様にキラキラした瞳でいいの!?と聞いてくるもんだから、思わず数歩後ずさって頷く。
よっぽど欲しかったのかな。青峰氏の比じゃないくらいに食べられた。ありがとうと笑う桃井さんはそれはもう美人だったから、まぁ許す。


「お前さつきにはあげてオレにはねーのかよ」
「だって青峰氏一口で全部食べるでしょ」
「さつきもかなりでかかったろが!」
「ごっごめんね久遠ちゃん、その、嬉しくってつい・・・!」
「あーいいよいいよ」


美女ってなにしても美女だから美女だよね・・・

なんて意味の分からないことを思いながら、残ったアイスを全部頬張る。
あ、ちょっと無駄な挑戦してしまった。含みすぎて歯と頭がキィンってなった。


「っあー・・・よし、帰ろっかな。お二人さん、また明日ね〜」
「待てよバカ」
「うぎゃ」
「大ちゃん!久遠ちゃんの首絞まってる!」


なんだなんだと振り向けば、困惑顔の桃井さんと少し拗ねたような顔の青峰氏。
桃井さんはともかくとして、青峰氏はなんなんだ。なんでそんな拗ねてんの。おもっきし唇とがってんですけど。


「ちょ、なに、青峰氏」
「・・・・・・ばーか」
「はぁん?なに拗ねてんの」
「拗ねてねーし」
「だっておもっきし唇とがってるけど」
「・・・うるせー。とっとと帰ればーか」
「だったら放してよばーか」


青峰氏は納得のいかない顔で私の服を放し、一瞬私の頬をつねって桃井さんを振り返った。・・・普通に痛いけど!?


「行くぞさつき」
「え?あ、うん。じゃあ久遠ちゃんまたね!」
「あ、うん」


どんどん小さくなっていく二人の姿。
さっささっさと歩いてしまう青峰氏に桃井さんが怒る声が聞こえた。

結局青峰氏はなにがしたかったんだ・・・
首をひねりながら帰路についた、その答えは分からないままだった。

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