ボールが跳ねる音、バッシュが軋む音。
帝光はマンモス校、その中でもバスケ部は一際目立つ存在にある。

そしてバスケ部の中で最も有名なのが、オレを含む"キセキの世代"だ。
そして最近シックスマンとして黒子も一軍入りし、帝光バスケ部はますます有名になった。

これは、そんな平凡とは程遠いオレ達キセキの、最近の会話。


「それでよ、あいつが・・・」
「ぶっはまじスかそれ!?」
「・・・あいつはマイペースすぎるのだよ」
「あの方らしいです」


練習の合間の休憩時間。
最近は必ずと言ってもいいほど、こいつらは楸さんの話をする。
同じクラスである青峰を筆頭に、黄瀬と黒子が参戦。そしていつの間にか緑間が口を挟む。

見る限り、本当に平凡な女だ。
関わらない限りオレにはその楸さんの魅力はわからなかったが、関わってみたら、なるほど面白い。
いや、面白いというより、新鮮なのだ。


「みんなして楸久遠楸久遠うるせーし。赤ちんあんなうるさいの黙らせなくていーの?」


楸さんと廊下でぶつかった限りで関わりがない紫原は、あいつらの話題に入ることはない。
平凡である楸さんに興味もそれほど沸かないのだろう、少し嫌そうな顔をするくらいだ。

オレは小さく首をふって、少し笑った。


「あいつ何回起こしても寝てやがんの」
「青峰君が起こす側だなんて、よっぽどですね」
「おいそりゃどーゆう意味だこらテツ」
「そのままの意味だろう。最悪二人して寝ているからな」
「それは聞き捨てならないね、青峰。・・・授業中に、寝ているのか」
「げっ赤司・・・!」


何言ってんだよ緑間ぁ・・・!と恨みがましい目を向ける青峰に、緑間はふんと鼻を鳴らした。

近くにいた紫原が「赤ちんも参戦すんのー・・・」と面白くなさそうに唇を尖らしたのが分かった。


「ちげーって!あいつが起きねーから、寝顔とか見てたらつられて・・・」
「つまり、寝てたんだな?」
「・・・お、おう」
「青峰、練習メニュー三倍だ」
「げええええぇっ!?」
「うるさい黙れ自業自得だ」


寝顔。
楸さんが寝ているところを想像して思わず緩みそうになる頬。
オレは気を引き締めて、号令をかけた。

・・・彼女ともし同じクラスだったら、なんてことを考える。
きっと通常通り進んでいく毎日も、少しは楽しく感じるのだろう。彼女といると、退屈しない。

例えば、過剰な期待というものから少し寄り道しているような感覚。
キセキうんぬんを抜きにして付き合ってくれる彼女の傍にいるのは、なんとも言い難い安心感があった。

とてもオレらしくないが。


「パス練習往復十回!青峰は三十回だ」
「マジでかよ・・・!」


だがオレ達はこれからも、負けるなんてことは有り得ない。
勝利こそが全てなのだ。

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