「あ、赤司君!」


目立つ赤色に声をかけると、偶然鉢合わせて流れでそのまま一緒に歩いていたりょた君がえっ!?と瞠目した。

え、久遠ちゃん早くないッスか!?

何が早いのかよく分からなかったからりょた君はスルー。
別段驚くことじゃないと思うんだけどなぁ。


「楸さん・・・と、黄瀬か。なにか用?」
「なんかオレついでみたいな扱い!」
「吠えるな黄瀬。反抗的な犬は嫌いだよ」
「理不尽!」
「で、楸さん。なにか用があったんだろう?」
「安定のスルー!」


さっきからうるさいりょた君は、この際私もスルーさせてもらって。

私は財布から小銭を取り出して赤司君に渡す。
赤司君は言わずとも、それがなんのお金かちゃんとわかったようだ。
僅かに、眉間にしわが寄った。


「別にいらない・・・と言っても君は拒むんだろう」
「あー、うん。やっぱりなんか悪いし」
「え?何があったんスか二人とも!」
「こないだの夕立の日にちょっとねー。ね、赤司君」
「ああ。なんにしろ、黄瀬には関係のないことだ」
「赤司っちは一言多いんス!」
「なにか言ったかい?」
「なんでもないッスHAHAHA」
「うん、主従関係の鏡だね赤司君とりょた君」


それより、と赤司君が私を見た。
何回見ても、吸い込まれそうな瞳をしてるなぁ、赤司君。


「少しついてきてくれないか」


断る理由も特になかったから、りょた君と顔を見合わせて二つ返事で了承した。


***


行き着いた先は、自動販売機だった。
さっき私が返したお金を早速挿入しているあたり、さすがの赤司君でもこの暑さに参っているのだろうか。

なにをしなくてもたれてくる汗を拭いながら、その一連の動作を眺める。
なんか、いちいち様になるなぁ赤司君て。

ぼーっと見ていると、ふいに赤司君が私を振り返った。


「楸さんは、ジュースだったら何が好きなんだい」


赤司君の指が緑茶のボタンに伸びている。

あれ、赤司っち部活のために水筒持ってきてるのに、わざわざ買うんスかそれ と隣でりょた君が呟いた。


「えぇ・・・っと、よく飲むのは炭酸かなー」
「そう」


ピッ。

緑茶のボタンに伸びていた指が、急に方向を変えてファ〇タのボタンを押した。

え、と思った時にはもう赤司君がファ〇タを片手にこちらに歩いてきていた。
ピトリと冷たい缶をほっぺにあてがわれ、不意の攻撃に肩が跳ねる。


「今日は暑いな」
「え?あ、うん」


微笑みとともにファ〇タを手渡される。
りょた君が そういう事ッスかと頭の後ろで腕を組んだ。

いや、いやいやいや。


「あっ、赤司君これ・・・!?」
「じゃあ俺は教室に戻るよ」
「ちょっ、え!?」
「ぬるくならないうちに飲むことだ」
「あ、赤司くうううん!?」


スタスタと歩いて行ってしまった赤司君。

・・・や、やられた。
どれだけ紳士なんだ赤司君・・・!


「気に入られたッスね久遠ちゃん」
「そ、そうなの?」
「だってあの赤司っちが・・・でもなんか面白くないッス!」
「いや知らんがな」

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