夏という季節が、私は嫌いで嫌いでしょうがない。
もともとそんなにストレートではない髪の毛があらぬ方向にぴんぴんぴんぴん跳ねやがるし、直すためにアイロンしてもプールあったりしてとれるし、水筒に入れてきたお茶も温くなるしなにより暑い。

そして、夏だから起こりうる現象で一番嫌いなもの。
それは。


「傘持ってきてないよ・・・」


夕立である。
もう一度言おう。私、傘持ってきてないよ。くそ。

夕立ほど嫌なものはないと思う。
予測できない上に雨粒がそれはもう強烈だし、傘持ってきてない人にとってはもう、いじめとしか思えない。

学校帰りで夕立に遭ってしまった私だが、さっきから何度も言ってるように傘なんてない。
慌てて近くのコンビニに逃げ込んだはいいけど、この夕立・・・止む気配がまるでない。
はあ、もう、萎える。


「ぐへぁ・・・」


思わず女子らしからぬ声が出た。

んーコンビニでわざわざ傘買うのもなぁー 早く帰りたい でも雨・・・


「・・・楸さん?」
「、え」


聞き覚えのある声がして、前方を見る。
そこには、最近よく私達のクラスに姿を見せる赤司君がいた。
・・・何故に。

交わった目が逸らせない。
何も言えずに突っ立っていると、何を思ったのか赤司君はこちらに向かって歩いてきた。


「傘、ないのか」
「え、あ、まぁ」
「・・・そうか」


そうかって。


「そ、ういう赤司君は、準備がいいね。予測してたの?」
「天気予報で言ってたろう」
「え、うそ」
「俺は嘘なんてつかないよ」


あ、れ。
なんで私、赤司君と普通に話してるんだろう。
あれ、初対面だよね、私達。

赤司君は少し考える素振りを見せて、財布を取り出した。
そしてコンビニの中に入り、売り物の傘を手にレジへ向かう。

意図がわからず動けない私に、赤司君は購入した傘を手渡した。

・・・え。


「さすがに相合い傘なるものはダメだろう」
「え、」
「俺はそれでも構わないが、もし誰かの目に触れたときにあらぬ噂をたてられて嫌な思いをするのは君だ」
「あ、うん。・・・え、待って待って赤司君、お金」
「気を遣わなくていいよ。俺がしたくてやったことだ」


それ、ないと困るだろう?

そう言って少し笑った赤司君が神様に見えた。
何この人。青峰氏は魔王だとか言ってたけどめちゃくちゃ紳士だよ。


「ありがとう赤司君、助かりました」
「ああ。じゃあ、気を付けて」


もうなんか、違う意味で赤司様だよ。

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