今日は朝から眼福だった。
そう友人に告げれば、友人は察したのか薄く笑って黄瀬君でしょと言った。視線はケータイにある。
人と話をする時は、目を見て話しましょうとか習わなかったのこいつ。
「そーデルモ。囲まれてて見えづらかったけど。女子邪魔だったーマジ私の目の保養なのに」
「久遠ってほんと変わってるよね」
「なぜ」
「黄瀬君のこと目の保養とだけしか見てないでしょ。他の女子はあわよくば恋人にーなんて思ってんのに」
「えー、だって私のダメさ引き立つじゃん嫌だよ。隣に並べるほどの勇気ないよ」
ふーんあたしはあわよくば派だけどな、ーとケータイをつつく手を止めない友人。
「てゆーか朝から黄瀬君拝めるとかラッキーじゃん。羨ましいー!」
「だしょー」
作り笑いを浮かべながら女子を適当にあしらう黄瀬君も、大変だなぁと思ったけどね。
デルモは辛いよ。
少し同情していると、いきなり頭を掴まれた。
え、痛いんだけどかなり。
こんな大きな手、青峰氏しかいない。珍太郎もおっきいけど、いきなりこんなことしないだろうし。
振り返れば、案の定青峰氏がいた。
「楸、今日昼空いてっか?」
「空いてない」
「わりぃけど購買ついてきてくんね」
「安定のスルー!」
つーかそんなの私じゃなくても誰かつれてけばいいのに、と呟けばお前が一番関わりやすいんだよと喜んでいいのかよくわからない言葉をいただいた。
とりあえずありがとうと返す。
友人を振り返れば、しっしと手を振られた。
「酷くない?ねえ?昼私がいなくて寂しくないの?」
「うんまったく。青峰君、何処へなりとも連れ回してあげて」
「おー。つーか購買だけど」
理不尽すぎる友人は、ケータイから一度も顔を上げなかった。くそぅ、ケータイに負けた。
「あたしらの友情なんてそんなもんなんだよ」
「安いなお前ら」