昼休み。
友人と一つの机で弁当を食べていたら、珍太郎からお呼びがかかった。
とても偉そうに腕を組んでるその手には、いつもあるラッキーアイテムがない。
「どうしたの珍太郎」
「真太郎」
「はいはい、で、どうしたの珍太郎」
「・・・貴様・・・!」
なにか怒鳴りかけて、私が箸を持ったままと気づいた珍太郎は、箸を置いてくるよう言ってきた。
少しだけの用事だと思っていた私は、不本意ながらも渋々箸を置きに机に戻る。
友達が興奮した様子で何事か聞いてきたけど、とりあえずめんどくさかったからスルーした。
すまん友人。
「で、なに?そんな大事な用事なの?」
「今日のラッキーアイテムは、仲の良い女子なのだよ」
「? うん?うん」
「そしてオレは弁当を忘れた」
「う、ん?ご愁傷様」
はぁ、とため息をつかれても意味が分からないから。
はっきり言いなよ。
私になにを求めてるのさ。
「これから購買に行きたいと思っていた所なのだが・・・いかんせん朝から不運な事が続いているのだよ。一人で行くのはあまりにも不安だ。オレと仲の良い女子などお前くらいしかいない。認めたくないが」
「ついて来いと?」
「要約すればそうなるな」
「最後の一言、超余計だったけどね」
珍太郎は仕方ないだろう、本音なのだからと鼻で笑った。
まじふざけんな。
そういえば、朝から頬になにか傷を負っていたから聞いてみたら、猫にかぐられたって言ってたっけ。
そう思ったら、少し珍太郎が可哀想に思えてきた。
「まぁ珍太郎の人事を尽くすために一肌脱いであげますか」
「すまない、助かるのだよ」
そのかわり何か奢ってと廊下に出ながら言えば、それは一肌も脱いでないのだよと眼鏡のブリッジを押し上げながら言い返された。