「楸、」
「んあ!」
大きな手に頭を鷲掴みにされて夢の世界から舞い戻る。
まだぼーっとする頭を懸命に働かせて周りを確認すれば、笑いを堪えている青峰氏が目に入った。
なるほど、彼が起こしてくれたのか。
「ましゃかあおみね氏に起こされりゅなんて」
「噛みすぎだろ。あとどーゆう意味だよ」
「いつもは寝てるのにと思って」
「お前の寝顔がウケたから観察してた」
「まさかヨダレとか」
「おうダラダラ」
「マジか」
それはいかん乙女としてあるまじき光景。
乙女とかどこにいんだよとか黙れ。目の前にいんだろが。
隣の席になった青峰氏と仲良くなるのは、そう難しいことじゃなかった。
見た目のせいか関わりにくいと思われがちだけど、逆だ。
普通の人より素直なだけで(素直すぎてたまに傷つく)、むしろ話しやすい。と言ったら友達にあんた凄いよと褒められた。
どうやら彼女達にとって、キセキの世代と話せること自体がキセキらしい。
うん意味わからん。
「次なんだっけー」
「知らね」
「知っとけよバカ峰」
「理不尽すぎじゃね」
スマホがチカチカと光っている。
開いてメールを確認すれば、姉ちゃんからパシりの要請だった。
便利な世の中になったものだよホント。
無視してカバンにしまう。
青峰氏はダルそうにアクビを溢した。
「次サボろっかな俺」
「チクるよ」
「・・・ちっ」
チャイムが鳴った。