ソファに座り、ぼんやりと二人で過ごしていた時のことだった。


「…はぁ。」


傍らに座るオニキスが盛大に溜め息をついたので、アレルヤは心配そうに眉を寄せて彼女の顔を覗き込んだ。


「オニキス、どうかした?何か悩み事でもあるのかい?」

「え…。何で?」

「何で、って…溜め息ついてたから。」


無自覚だったのか、アレルヤの言葉にオニキスは目をぱちくりさせて彼を見上げる。それから口元に手を当てて、気まずそうに笑みを零した。


「あぁ…。ごめんね、癖みたいなものなの。悩みとか、そんなんじゃないから。」


自分でも無意識の内に溜め息をついていることが多々あった。端から見ればあまり良い癖では無いだろう。本人はなんの気なしにつく溜め息でも、こうして誰かに無用の心配を掛けてしまったりするのだ。


「またスメラギさんに“幸せが逃げるわよ”って言われちゃうわ。」


そもそも私達に幸せなんてあるのかわかんないけどね。そう付け足して苦笑したオニキスの瞳に、僅かに翳りが射した。どこか切な気に微笑んだその横顔が、酷くアレルヤの胸を締め付ける。


「…オニキス」


そしてまた無意識に、溜め息をつく為に大きく息を吸い込む彼女。それがオニキスの許から幸せを逃がしてしまうと言うのなら、繋ぎ止めるのは自分の役目であると思いたい。





「…んっ!?んぅう…っ」





息を吐こうとした瞬間視界が翳り、突如唇に降りた柔らかな感触にオニキスは大きく目を見開いた。溜め息の代わりに聞こえたのは、動転した彼女の小さな呻き声。


「……っはァ、あ…アレルヤ…?」

「大丈夫。君の幸せは、僕が繋ぎ止めるから。」


遮られた溜め息は、傍らに座る彼の甘く優しい口付けに溶けて消えたのだった。





幸せをぎ止める











20080818

アレルヤは真顔で恥ずかしい台詞言ってればいいよ←



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