活動が活発になりつつあるテロ組織の動向を探るべく、潜入して情報を収集する。それが今回オニキスに与えられていた任務だった。

「そろそろ口を割ろうって気にはならないのか?」

「………。」

オニキスは突き付けられた銃口を睨み据える。拘束されてからもう随分と時間が経っていた。

迂闊だった。どこかに慢心があったのかもしれない。原因を述べるとするならばそれしかないだろうが、今更後悔してみたところで現状は変わらない。

「どこの陣営だ?何の目的でここに来た。」

「………。」

何度も繰り返される質問に、オニキスは無言で返す。何を聞かれようが答える気は毛頭無い。

「強情な女だな。まぁいい、日が昇れば本部から迎えが来る。そうすれば嫌でも洗い浚い吐くことになるからな。覚悟しておけ。」

脱出しようにも、両手は後ろの柱に縛られて自由が利かない上、例え縄が解けたとしても右足を負傷し思うように動くことが出来ない。状況の打開策が見当たらず、まさに八方塞がりだった。

下卑た笑いを浮かべる男の顔を、オニキスはもう一度睨み付ける。その時だった。

―パァン!

乾いた音が空気を切り裂き、目の前にいた男の頭に突如風穴が開いた。残響が消えゆくのと同時に、男の体がぐらりと傾き地面に崩れ落ちる。

「オニキス!!」

聞き慣れた声、そして今一番聞きたい声だった。

「…え……ロックオン…?」

聞き間違いかと自分の耳を疑い、まだ煙の昇る拳銃を握り立っている人物を見て、オニキスは驚きに目を見開く。

「何で…ここに……。」

ロックオンはオニキスに駆け寄り、柱に縛られた腕の縄を解いてその身体をぎゅっと抱きすくめる。

「馬鹿野郎…!」

張り詰めていたものがプツンと切れ、安堵の涙が溢れた。ロックオンにしがみ付くと、オニキスを抱き締める腕に一層力が籠もる。

「オニキス……お前までいなくなったら、俺はどうすりゃいいんだ…?」

悲痛な声だった。抱擁を解いて、ロックオンはオニキスの顎に手を掛け唇を重ねる。

「…ごめん…なさい……。」

翡翠の瞳がふと細められる。くしゃりと髪を撫でられ、オニキスは俯いた。そして、目に映った光景に表情を変える。

「ロックオン!手、怪我してる…!」

スナイパーであるロックオンにとって、引金を引く利き手は命とも言える。そう深くはないようだったが、その右手に付いた真新しい傷から赤い液体が流れていた。

「あぁ…構いやしねぇよ、こんくらい。俺の手なんかより……オニキス、お前の方が大事だ。」

そう言って、ロックオンはオニキスの体を抱き上げた。バランスを失い、オニキスは思わずロックオンの首に腕を回す。目が合った。ロックオンは穏やかに微笑む。

「ほら、帰るぞ、オニキス。」





に変えても

お前を守ると決めたんだ。











Req≫敵軍に捕われた夢主救出

20080121



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