お囃子の音に胸踊らせて、からころと下駄を鳴らし歩く。

落日の涼風と、祭特有の熱気に満ちた参道。行灯が照らす通りに並んだ屋台を冷やかしながら、オニキスはニールの手を引いていく。

「あ!ニール、次あれ食べよう!」

目当ての屋台を指差しながら隣を見上げると、着慣れない筈の浴衣も見事に着こなした彼が笑う。

「意外と食い意地張ってんだな、お前。」

綿菓子にチョコバナナ、そして今度はリンゴ飴――。先程から食べ物絡みの屋台ばかりを指し示すオニキスをからかうと、予想通り頬を染め、唇を尖らせてそっぽを向いた。

「い…いいでしょ、今日くらい!だってお祭りなんて久々なんだから…」

「別に悪いなんて言ってないだろ?」

「ニー…ル…」

年齢の割に子供じみた仕草を見せるオニキスの顎を、ニールは慣れた手付きで掬い上げた。無防備な唇に自分のそれを重ね合わせて、柔らかな下唇を食むように、そこに残る甘さを舐め取る。

「………ん、甘いな。」

「…な……」

ここは参道の往来の最中だ。当然、そこかしこに人目がある。行き交う人々の視線を痛い程感じ、気恥ずかしさと驚きとで、頭の中が真っ白になる。



「ばか…!」



やっと口をついて出た言葉は、たったそれだけ。効果のない睨み目で隣を見上げると、いつもより少しだけ意地悪そうに、けれど優しく微笑む翠緑色の淡い瞳。その色合いに魅入られて、思わず眼が離せなくなる。

「ほら、オニキス。食べるんだろ?リンゴ飴。」

「………食べる。」

まるで店先に並んだリンゴ飴みたいに。
鮮やかに紅く色づいた頬を覆い、オニキスはこくんと頷いた。





祭の夜の模様











20090317
Req≫ディンに

最早じゃがいも好物なニールがじゃがバター食べてるとこしか想像出来ないんだがじゃがバターは流石に色気が無さすぎて自重w



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