ノックの音に眠りを妨げられ、ベッド脇に置いた時計を覗き込んだ。短針は既に、日付が変わってから一回りしようとしている。
「…あ〜……やっば、もう昼だし…」
今日は休暇を貰っているからさして問題はないが、午前中にやろうと思っていた予定は全て未消化になってしまった。
一つ大きく伸びをしてからのそのそと身体を起こし、目を擦りながらドアに向かう。何用なのかと首を捻りながら、オニキスは扉一枚隔てて訪問者に呼び掛けた。
「だれ…?」
「…っと、まだ寝てたか?悪いな、折角の休みなのに起こしちまって。」
寝起き特有の鼻に掛かったオニキスの掠れ声に、扉の向こうの声の主は少し申し訳なさそうに笑った。
「…ロックオン?」
「昨日言ってた資料持ってきたんだが…、今いいか?」
「あぁ…待って、ごめん。今開ける。」
そう言えば、昼過ぎに次のミッション関連の資料を届けてくれるよう頼んだのは自分だったか。鏡台を覗いて適当に寝癖を撫で付け、ドアロックを解除する。
「…おはよ、ありがと。……ロックオン?」
中々差し出されない資料を疑問に思ってロックオンを見上げると、彼は双眸を見開いたままその場で硬直している。
「どうかした?」
「……な…、オニキスおまっ!何て格好してんだよ…!」
ロックオンは我に返ったように声を上げ、視線をオニキスから勢いよく引き剥がした。
小首を傾げたオニキスが着ているのは、少し大きめの白いYシャツ一枚のみ。寝起きのせいか襟元は着崩れており、丈は辛うじて下着を隠す程度の長さ。太股から下はと言えば、惜し気もなく外気に晒されている。
何と言うか、いい意味で目に毒だ。
「何って、パジャマだけど。」
「パジャマ…」
「大丈夫、隠れてるし。」
「そういう問題じゃねぇだろ…!」
「そうなの?」
隠すべきところはちゃんと隠れているのだからあまり問題ない気もするが、ロックオンは不自然に視線をさ迷わせている。話が進まなさそうなので、オニキスは彼がここに来た目的を果たしてもらうべく、本題を切り出すことにした。
「取り敢えず、資料貰っていい?」
「え…。あ、あぁ…これな。」
「ん、ありがとね。」
身長差のせいで自然と上目遣いになるオニキスと目が合い、ロックオンは決まり悪そうに視線を泳がせる。
(待て…待てよ俺。落ち着け俺…!)
内心で必死にそう言い聞かせながら半ば押し付けるように資料を渡し、改めてオニキスの格好を見た。意識すまいとすればする程、Yシャツの胸元や裾から覗く足のラインに目が行ってしまう。
「………。」
「…何よ、ジロジロ見て。」
「いや何って…、無防備すぎるだろ…。」
「だって楽だし?」
「あのなぁ…」
「細かいこと気にしないの。男でしょ。」
「男だから気にしてんだよ…!」
「ふうん?」
まるで理解した様子もないオニキスの様子を見て、ロックオンは疲れたように肩を落とし項垂れた。
「せめて人前に出る時は下くらい履いとけ。で、もう少し貞操観念を持て。頼むから…」
「テーソー…?あ〜、わかったわかった。今度から気を付けるから。ねぇ、それよりもうお昼食べた?」
「いや、まだだけど…」
「なら一緒に行こうよ。待ってて、服替えてくるから。」
そう言って身を翻し室内に戻っていくオニキスを、ロックオンは複雑な表情で見送った。
「絶対わかってねぇよなアイツ…。ったく、襲ってやらないとわかんねぇのか…?」
いや、下手をすれば襲われても気づかないのかもしれない。
「………はぁ…。」
居合わせたのが自分だったことへの安堵か、あまりに無防備なオニキスに対する呆れか。頭を抱え、ロックオンはどちらとも付かない溜め息を吐いたのだった。
魅惑の人魚姫20091026
500,000HIT御礼企画
フリーリクエスト
Yシャツをパジャマがわりにするヒロインに悩むロックオン
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タイトルはあれですね、某曲の歌詞からですね。Yシャツパジャマ=生足=それしか出てこなかったっていう←短絡的
リクエストありがとうございました。
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