【プロローグ】






私の父は22年前に死んだ。



それはちょうど私が生まれたその日、教師だった父が病院前で"何者か"に殺されたのだと聞いている。同じくして孫の顔を見に来た祖父と祖母も同様の手口で殺された。

死因は出血性ショック死。正式な報道には流れなかったが、体の至る所に裂くような切り傷と打ち身があり、人間ではない"何か"に襲われのだと母は言う。

それから私は血族に一団となって"悪魔の子"と囁かれた。その事件の因果が全て私にあると察していたのだろう。

幸い、父は良家の家柄だったらしく他界した後も家庭は裕福。何不自由ない暮らしを送り、私が4つの頃には母が私の為にと弟を産んでくれた。

父親の名は教えてくれなかったが、半分血の繋がった大事な弟。そして母を合わせ、今まで3人で人生を共にして来た。

その中でも色々なことがあった。私が13の頃、父が持っていた23の会社と財産を全て母から託されたこと。反抗期の過程か弟が私を連れ家を出ようとしたあの日。母が心労で息を引き取った…あの夜。



全てが私の記憶に刻み込まれている。



今春、弟は高校を卒業し、王崎家全会社の取締り代表となった。つまり社長に就任したということで、会社の全所有権を譲った私に後悔はまったくない。

そして私は今、私立成王学園の前にいる。父が一代で創立し勤めていた学園にこの春晴れて就任が決定したからだ。

実習生として研修を終え教職員免許を取り、ようやくスタート地点に立つことが出来た。父の幻影を追っている訳ではない。ただ気が付いたら教職を目指していただけで、決して深い意味はない…はずだ。

父と同じ学園に就任出来たのも何の因果かは知らないが、おそらく私の"王崎"という名字が上の者を動かしたのだろう。それに新米教師だというのにクラスまで受け持つこととなった。与えられたからには全力でやるしかない。いつかは通る道ならば、それを越え上へと登ってみせる。



それが……逝ってしまった両親への、せめてもの償いだと思いたいからだ。







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