【Side,11(眞壁)】
「れーん!せんせー!どこにいんだー!」
オレは今、アクション映画のヒーローになってる。はぐれた仲間を必ず見つけて、2人ともオレが守ってやんだ。
「おーい!2人とも返事してくれー!」
だけどさっきからなかなか仲間が見つかんない。頑張って探してっけど、呼びかけても返事はなかった。
校舎と校舎の間を全力疾走。体力には自信あっからこんなことぐらいへっちゃらだ。煉や先生の命には代えらんねぇ。オレは声が枯れる覚悟で空に向かって叫び続けた。
「れーん!せんせー!」
水泳で鍛えた肺活量。それに乗って響いた声にようやく奇跡が降りかかる。どこからか声が聞こえた。その返事が聞こえた方にオレは素早く脚を走らせる。
校舎の間を逆戻りし、左に曲がる。ざわざわと声がした。きっとこの先にオレの仲間がヒーローを待ってんだ!
「煉!先生っ!」
角を曲がりヒーロー参上!悪者はオレが引きつけてやるぜ!
「眞壁見っけ!」
「ぉあ!?」
腕を掴まれヒーロー拘束。両サイドから自由を奪われて、オレは目を白黒させた。
そこにいたのはクラスメイトと他クラスのみんな。横一列に手なんか繋いで、いったいなにしてんだろ。
「12人目!楽勝ですなおやびん!」
「はーはっは!俺様のような大鬼様にゃこれくらい朝飯前よぉ!」
その言葉に周りがドッと湧いて、みんな笑ってる。すっげぇ楽しそうだ。そういやオレ達手繋ぎ鬼してたんだっけ。だけど今は煉達の行方を探しに行かねぇと!
「離してくれ!オレは煉と先生を助けに行きてぇんだ!」
「眞壁ー、お前そんなんで逃げられっと思ってんのかー?」
「ちげぇよ!オレはマジで2人を、」
「王崎先生のデザートは俺達Cクラスのもんだ!さぁ行こうぜおやびん!小鬼どももきりきり歩けよ!」
はーはっは、と高笑いしながら進み始めた集団の隙間にオレは挟まって身動きが取れなかった。これじゃあヒーローどころか小鬼の一味になっちまう!
「れーん!せんせー!助けてくれー!」
まるでドナドナのように浚われて行くヒーロー。こんなはずじゃなかった。オレはこんなはずじゃ…!
「黙れ新入り!お前なんか尻叩きの刑だ!」
「きゃいーん!」
空に響いたヒーローの叫び。助けてくれー!ともう一度続けて叫ぶ。アクション映画の主役はいつの間にかコメディ映画に席を入れ替えていたようだった。
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