Clap



※男主ver









あ、先生だ。


体育の授業中、ふと上を見上げたところ窓から見えたその横顔にドキリとする。2階の教室ということは2年生の授業をしているのだろう。

凛とした面持ちで黒板になにやら書き込んでいる。その唇が時たま動き、後ろにいる生徒達に説明をしている姿は新米教師とは決して思えぬ堂々っぷりだ。


いいなぁ…。僕も早く先生の授業受けたい…。


1ーBは本日世界史の授業はない。明日の3限まで我慢しなければならないのだ。宿題は出ていないから予習復習しか行えない。彼の授業ならいくら宿題を出されても喜んでこなす自信がある。

どうせなら毎日世界史があればいい。机に座って、彼の授業を受ける。授業が始まる数分前からそわそわして、彼が教室に入って来た瞬間から全身のやる気がみなぎる。

教卓に立つ彼をじっと見つめても授業中だから誰にも咎められないし、邪魔されない。問われた問題に正解を返せば真っ正面から褒めてくれる。

授業中はずっとドキドキしっぱなしで。こんな遠くから眺めていても、もうこんなにドキドキしてる。

嫌なドキドキじゃない。これは…胸を焦がすような、なんとも言えない感覚。



早く会って、会話をしたい。



早く会って、その声を聞きたい。



早く会って…、



その瞳に、僕を映させたい。





そんなことを考えていたからだろう。都筑は無意識に先頭へ立つものの、ホイッスルが鳴ったのには気付かずにあらぬ方角を眺めていた。



「都筑さん?都筑さん!」



佐倉の何度目かの呼び掛けでようやく意識がこちらに戻る。ハッと前を見れば前方を走るクラスメイトの姿。ハードルを飛び越えもうそろそろ最後の直線に入ろうともしている。



「わっ!ごめんなさい!僕、ぼーっとしてて…!」

「何度呼び掛けても反応がないものですから幽体離脱でもしているのかと思いました」



いいから次の走者と一緒に走りなさい。

そう咎めることなく言われ、すごすごとレーンの端に寄る。クラウチングスタートは苦手なので立ったまま次のホイッスルを待った。



その時、ふと視線を感じてまた上を見上げる。



呆れたように苦笑する彼が…窓越しに、見えた気がした。



──ピッ。



目を凝らして表情を確認する前に無情にも鳴り響くホイッスル。都筑は本気を出さないよう神経を使いながら50メートルハードルを完走していた。



全速力で走っているような、そんな鼓動を感じながら。






thank-you clap!


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