玄関の方へと行くと、ドアをガリガリと引っ掻くような音がする。
茜は息を呑み、玄関のドアをそっと開けた。
するとそこには…
「……おおかみ……」
そこには、綺麗な銀色の毛並みをした狼がいた。
一瞬驚きはしたものの、その狼に恐怖心を抱くことはなかった。
なぜなら…
「……ジンさん……?」
ーグルルル…
深い緑色の瞳を持つ狼。
彼が茜にすり寄ると、茜も視線合わせるようにしゃがむ。
すると、首筋を鼻筋で擦られる。
「くすぐったいよ。
…やっぱりジンさん、だよね?でも何でこんな姿に……?」
ーバウッ
「……うん。なんでもいいや。
ジンさんおかえり!」
茜はぎゅっと狼……ジンを抱き締めた。
ジンは平静を装っているように見えたが、しっぽがぶんぶんとちぎれんばかりに振られている。
「ジンさん、体は素直なんだね」
そう言われて不服なのか、ヴーと低く唸るジン。
「ふふ。
ふわぁ…。なんか眠くなってきた。
ジンさん、一緒に寝よ?」
わしゃわしゃとジンの頭を撫でると、ふいっと顔を背けてすたすたと寝室へと行ってしまった。
「まってよ、ジンさん!」
茜はジンを追って寝室へと向かった。
ジンを追いかけて寝室へ行くと、ジンは広いベッドを占領していた。
ジンさんが陣取ってる…という下らない洒落が思い浮かんでしまったのは不可抗力だろう。
茜もちょこんとベッドの上に座った。
「…ジンさん。
わたし、ジンさんに会えなくて寂しかった。コナンくんも赤井さんも安室さんも来てくれたけど、やっぱりジンさんが恋しかった」
茜は独り言のように喋りながら、ジンの頭を撫でる。
「でもやっと帰ってきたと思ったらこんな……何で狼になっちゃったの?ジンさん……。
いや、かっこいいけどさ、かっこいいんだけど」
すると、ジンはむくりと体を起こすと茜の顔を舐めた。
「ちょ、ジ、ジンさん!」
ぬめりとした舌が目元の雫を舐めとる。
あぁ、自分は泣いていたのかと今になって気づく。
そして、鋭い緑色の瞳と視線が交わった。
その色に魅入られていると、ジンは前足を茜の肩に掛けてグッと体重をかけた。
「え?…ちょ、ジンさん!?」
一瞬のことで、ドサッとジンに押し倒されてしまった。
「ジンさん!だ、だめだって!」
必死に押し返すも、強い力に押し返される。
茜は声を荒らげながら足をばたつかせた。
それでもジンは茜を解放しようとはしない。
じっと見つめるジン。
その瞳に見つめられると、だめなのに許してしまいたくなる。
大好きなジンに変わりはない、が今は狼だ。
いくらなんでもそれは禁忌だ。
そう分かっているはずなのに、その瞳の奥の熱に絆されてしまう。
そして……
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