アクタベさん


「みるくてぃー、のみたい……。」
「……は?」
 みるくてぃー?
 うん、そう。
 表情も変えず淡々と尋ねるアクタベに、ななしは机に寝そべる事をやめずに、力なく言う。ベッドに腰を下ろしながら足を組んで本を読んでいたアクタベは、突然力なく口を開いたななしへ顔を向ける。
 持ち帰った残業に向かう事数時間。持ち帰った残業に対して呻いたり解決策を口にしたりして持ち帰った残業に対して立ち向かっていたものの、ななしの集中力が切れた。
 机に突っ伏して顔の向きを変えて机へ頬を寄せるもつかの間、ななしは欲望を吐き出した。「あ、ミルクセーキでもいいよ」「は?」と、力なく呟いたななしの一言に、アクタベは素っ頓狂な声を出して、訝し気な目でななしを見た。甘いミルクセーキが飲みたい、とポツリと言ったななしに、アクタベは益々怪訝そうな目をする。アクタベの眉が怪訝そうに歪められる。そして視線を左下から右上へ斜めに反らして動かした後、「はぁ」と溜息を一つして、腰を上げた。
 アクタベの手がカチャカチャとミルクセーキを作る。分けられた白身は冷蔵庫の中へ戻され、カップの中に残る黄身が三温糖と共に掻き混ぜられる。手元のレシピを手繰り寄せ、温めた牛乳をカップの中へ注ぐ。そこから更にマドラーで掻き混ぜたアクタベは、出来上がったミルクセーキの入ったカップをななしの凭れる机へ持って行った。台所から部屋へ一歩入った途端、アクタベの体が固まる。ピタッと足を止めたアクタベは、真一文字に口を引き締めたまま、目元にドス黒い影を落として、机の上へ眠りこけるななしを見た。
 数歩進んで、目と鼻の先で机に凭れ掛かって眠るななしを睨みつけるように見下ろす事数秒、キレたアクタベの足がガツン!と大きく机の足を蹴った。
「ふわあ!?」と驚いて飛び上がったななしの口の端に垂れる涎に構う事なく、出来上がったばかりのミルクセーキを揺れの止まった机の上へ置いたアクタベは、ななしをベッドの上へと連行した。



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