鬼叺 novel | ナノ
二人だけの世界に逝こう

「ね、駆け落ちしよ。」
「……何処に。」
「それは剣城が決めてよ、男だろ?」
「、……。」

お前も男だろ。
喉まででかかった言葉を飲み込む。
もし口に出していたら、返事だけしてればいいのに、と理不尽なことを言われていたに違いない。
溜め息の替わりに目を伏せた。

「剣城。」
「…………誰も居ないところ。」
「うん。」
「二人だけ、居ればいい。」
「俺も、二人だけでいいよ。」
「二人だけの世界に行きたいな。」

言っていることは本心。
でも、無理だと心の隅で思ってる。

妙に冷静な自分に嫌気がさして、考えを振り払うようにキスをした。
歯と歯がぶつかって唇が切れると、簡単に血が出る。
簡単に血が出る。

血が沢山出ると、死ぬ。


あ、死ねばいいのか。


なんだ。
簡単に行けるところに、二人の世界はあった。

「天馬。」
「ん、っ。」
「死のう。」
「え、………?」



最期のキスは血の中で。



12/02/01


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