5



「暇だなぁ…。」

放課後の図書室…むしろ図書館のような膨大な広さの片隅で、私はカウンターに腰かけている。

ちなみに私は図書委員ではない。
そして図書委員の友達もいない。

ではなぜこうなったかというと、毎度おなじみのあのバカのせいだ。


それは時をさかのぼること30分前…。

部活が休みだった桃矢と「今日はゲームでもするか」なんて話しながら帰っていた。
すると前から厳しいことで有名な生活指導の先生がきた。
正直その先生が苦手な私は足早に傍を通り過ぎようとして驚くべきものを見た。

実は生活指導の先生はヅラだ。
怖いから誰も触れないけど皆知ってる。
そのヅラが見事にずれていたのだ。

そこであのバカの登場。
空気を読めないのか、読まないのか、とてもいい笑顔で言ってしまった。

「先生!ヅラがずれてますよ(笑)」

……その場の空気が凍ったのが分かった。
当然バレていないと思っていた先生は顔を真っ赤にして怒り、たまたま担当がいなかった図書室の当番を押し付けた。

なぜか私にもね…!!!


ということで折角の放課後を図書室で過ごすことになってしまった。

桃矢は本の整理をしに行っちゃったし、借りにくる人どころか図書室にいる人じたい殆どいなかくて、私は暇を持て余してる。

「霜月!!」

「桃矢!図書室では静か…に…。」

「見て!キノコ拾った♪」

桃矢は騒ぎながらこっちに来るのが分かったから注意しようと振り向くと、桃矢はキノコというよりキノコヘアーの少年を連れて来た。
年下なのだろうか?どこか可愛げのあるその子は明らかに無理矢理連れてこられて少々不機嫌そうだ。

「こんの…バカ!!痛いけな少年を無理矢理連れてくるんじゃない!!!!」

「ギャッ!!」

私はここが図書室だと忘れて桃矢に懇親の一撃を食らわせた。
頭を抑えて悶えているバカはほっといて、私は呆けている少年のところに行った。

「ごめんね、バカが勝手なことして…。」

「いっいえ!大丈夫です…!!」

「桃矢!あんたも謝る!!」

「すっすみませんでした……。」

「いえ本当いいんで、それより本…借りてもいいですか?」

なんとも優しい少年だ。
私は少年の心の広さに感動しながら借りようとしている本を受け取ると、題名に固まった。






『実録!本当にあった世界のミステリーホラー』

ビックリした。それはもう驚いた。
まさかこんな痛いけな少年が明らかにグロテスクそうなまがまがしい本を借りるとは…。

「…こういうの好きなの?」

「はい!凄い好きなんです!!」

何気なく聞いただけなのに、目を輝かせてこっちを見てくる少年は冗談無しでマジで可愛い。

「先輩も怖い話好きなんですか?」

「怖い話っていうよりかは、不思議な話が好きかな。都市伝説とかさ。」

「俺も都市伝説に興味あるんです!!」

そこからしばらく、メジャーからマニアックな話まで話して盛り上がって……めっさ懐かれた。

「こんなに話せる人に会うのは初めてです!」

「少年もなかなかマニアックな話が出来るねぇ。」

≪キーンコーン、カーンコーン≫

だいぶ話しこんでたみたいで、気付けば時刻は下校時間を示していた。
図書室にはすでに私たち以外は誰もおらず、閑散としていた。

「そろそろ帰らないとね。」

「あの、先輩。俺、2年の日吉若です。先輩の名前を聞いてもいいですか?」

少し照れておずおずと聞く少年に、思わず悶えそうになる。
いや、抑えたけどね…ギリギリだったけど…。

「3年の久世霜月。またお話しようね、日吉君。」

「はい!!」

なんとも嬉しそうに返事をした日吉君は「それでは失礼します」とご丁寧な挨拶をして帰っていった。

「可愛い子だったな〜♪」

「霜月〜…」

「あれ?桃矢いたの?」

「ずっといたよ!!」

どうやら桃矢はずっと傍で会話を聞いていたらしい、入りたくても入れなかったと不貞腐れていた。

「もぉ!俺を忘れて楽しそうにすんなよな!!」

「ハハッ、ごめんごめん。」


偶々手伝うことになって最初は面倒だけど、あの可愛い後輩と出会えてたと思ったら悪い気はしなかった。



[ 8/12 ]

[*←] [→#]
[戻る]
[しおり]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -