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宍戸目線

最近、俺は秋川桃矢とつるんでいる。

秋川はムードメーカーという言葉が似合う程明るい奴で、クラスでも人気者の部類だ。

そんな秋川には仲が良い幼馴染がいるらしい。
その幼馴染はあまりいい噂を聞く奴ではなく、噂では秋川を下僕扱いをしているとか…。

そして今、噂の幼馴染は俺の前にいる。


「桃矢。」

「あれー?霜月じゃん!教室まで来るなんて珍しいね。」

「英語の教科書忘れちゃってさぁ…貸して。」

「英語の授業はサボるか、寝てるかなのに?」

「今日は長文があたるからね。」

「変なとこで真面目なんだから。」

可笑しそうに秋川は笑っている。
なんだか楽しそうだ。

「あっ、宍戸。この子は俺の親友の久世霜月。霜月、こっちは宍戸亮。友達なんだ。」

秋川が仲介して紹介してくれた。
俺は軽く頭を下げると、向こうも同じようにしていた。
なんだか不機嫌そうに見えるのは気のせいだろうか…。

「宍戸はあのテニス部なんだよ!」

「あっそう…それより、教科書は?」

「今取って来る!」

テニス部をそれよりなんかで片付ける女子なんて初めて見た。
自分で言うのもなんだが、俺たちテニス部はモテる。
学校でも一際目立つ存在だといってもいいだろう。
それをこいつは興味なさげに言うものだから驚いた。

もう一度、幼馴染を横目でみる。






顔が険しくて怖いです……。

「ごめーん、霜月!教科書持って帰ってた!!」

秋川が戻ってきた。
少し気まずい雰囲気だから助かった。
いや、ほんとに助かった;;

「これじゃあ、授業受けられないなぁ…。」

「なぁ…俺が貸そうか?」

思わず口から出てしまった言葉に俺自身が驚く。
彼女の困った顔を見たら、言わずにはいられなかった。
さっきまで恐怖しか湧かなかったの、変だ。

まぁ、困った奴を助けるのは、人として当然だよな。

「いいの?」

「あっあぁ…別に今日は使わねぇし。」

「ありがとう。また改めてなんかお礼するよ。」

気のせいだろうか?
幾分か顔付きが柔らかくなった気がした。
険しい顔を見ていたからだからか、その顔が優しく慈愛に満ちた顔に見えた。

「お礼、何がいいかな?」

「ハイッ!ハイッ!ハイッ!弁当!!」

「桃矢には聞いてないよ。」

「霜月の弁当美味しいんだもん!宍戸!弁当にしなよ!ねっ?」

そう言って詰め寄る秋川を彼女が引き離してくれた。

「ごめんね、宍戸くん。桃矢が馬鹿で;;」

「…弁当作ってもらっていいか?」

多分只の好奇心。
秋川が絶賛するくらいだから、食べてみたいなと思っただけ。
決して彼女…久世が作ったから食べたいわけじゃない。

「そんなんでいいなら、喜んで。」

初めて会ったときの顔からは想像出来ない程、優しい笑顔だった。
それに少しときめいたのは内緒だ。

「教科書ありがとう。明日は腕によりをかけて作るから楽しみにしてて。」

教室へと戻っていった久世の背中を見送った。
案外いい奴なのかもしれない…。










―翌日―

「宍戸くん!!」

昼休み。
久世の弁当がいつまで待っても来ないし、取りに行くのも恥ずかしいので、諦めて購買に行こうとしたら、呼びとめられた。

「よかった、やっと会えたよ。ごめんね遅くなっちゃって。はい、これお弁当ね。」

久世が差し出した弁当は淡い青色のシンプルなデザインだった。

「一応、家にある弁当箱の中で一番男の子っぽいの選んだつもりなんだけど…嫌かな?」

ピンクよりはマシかなって思ってさ…と苦笑気味で笑う。
そこまで考えてくれたのはありがたい。
いかにも作ってもらいましたみたいな弁当箱は気恥ずかしい。

「なんかわりーな、気遣わせて。俺は教科書貸しただけなのに…。」

「私がしたくてしたんだから、いいよ。で、これも私がしたくてしたことね。」

俺の手に置かれたのは小さなカップケーキだった。

「お弁当だけじゃ寂しいと思ったから作ってきたんだ。甘さ控えめだから、男の子でも食べられると思うよ。」

不覚……。
久世が満面の笑みで言うもんだから思わず顔が赤くなった。
そろそろ戻ると言って、去って行った霜月とは反対に俺はその場でしばらく固まった。

「誰だよ、あの噂流した奴…///」

少し話しただけで、彼女の印象は随分変わった。



これはもしかすると、ハマったかもしれない…。


→おまけ

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