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昼休みが終わり、程よくお腹が一杯になり、こんな陽気な中授業を真面目にうけるのが馬鹿らしくなる。
おまけに次の授業は私の嫌いな英語ときたから、私は屋上へ逃亡を図ることにした。
≪ガチャ≫
「おー静かだなー。」
授業中だから誰もいない屋上は、日がよく当たって、少し風が吹き、居心地の良い場所になっていた。
「さて、何処で寝ようかなっ…と…あれ?」
寝やすいばしょにを探す為に周りを見ると、丁度ドアの死角のところに一人の男の子が寝ていた。
「もし、もーし…起きてますかー?」
授業に寝過ごしてると思い、傍まで駆け寄り起こそうとしてみても、よほど熟睡してるのか全く反応が無かった。
「(それにしても羊みたいな子だな。)」
金色のふわふわした髪に丸まって寝ている姿は、女の私から見ても可愛らしく、羊みたいに思えた。
取り敢えず、完全に寝る気が失せた私は、その羊さんの隣でしばらく観察してみることにした。
「羊さん、なかなか可愛い顔してますね……。」
隣に座ってよくよく顔を見てみると、睫毛は長いし、色は白いしで目を瞑っていても、パッチリおめめが容易に想像できる。
そのあまりに可愛い顔に女として、少しの嫉妬心が沸いてしまう。
無意識に頬を抓ってしまい、羊さんが身動ぎをして焦った。
このままでは起きてしまうかもしれないと考えた私はサボり場所を変えることにした。
誰でも起きたとき見知らぬ顔があったらビビるだろうからね。
スカートに付いた埃を手早く叩いて立ち上がる。
羊さんはまだ夢の中から出てこなさそう。
今のうちにとドアまで移動すると、それなりの強風が吹いた。
「…さぶっ!!!」
あっ、このままじゃ羊さん、寒いじゃないか!!
予定を変更して羊さんを起こしにかかる。
「羊さん、風引きますよ〜」
いくら陽気な天気だからと言っても、もう9月の半ばである。
風も吹いてきて、段々と肌寒くなってきた。
今はまだマシでも、このままだと風邪を引く可能性は高いだろう。
なのに、羊さんは身動ぎ一つしなかった。
さっき起きそうだったのに…。
そう言ってる間にも風は少しずつ吹いてきている。
「仕方ないなぁ…羊さん、これ貸してあげます。聞こえてないかもしれませんけど、覚えていたら、3年F組の久世霜月まで返してきてください。」
なるべく耳元で呪文のようにボソボソと言い、着ていた真っ白なカーディガンをそっと掛けてあげる。
「クスッ…(更に羊みたいになった。)」
ふわふわなカーディガンは羊さんの毛皮っぽく見え、見ていると癒される。
「じゃあね、羊さん。風邪、引かないようにね。」
ドアのところでもう一度羊さんを見て、音をなるべくたてないように、ドアを閉めた。
カーディガンが無いせいで肌寒かったけど、一時の癒しの時間を手にいれ、私の心は朗らかだった。
「あっ、あのカーディガン桃矢のだった…。」
これは言い訳が大変そうだ。
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