15


〜side 京子〜


最近ツナくんが怖い。
皐月ちゃんが私のことを虐めてるって勘違いをした日から別人のようになってしまった。
今だってほら、皐月ちゃんを殴って笑ってる。
獄寺君も山本君もみんな笑ってる。
私が知ってる皆じゃない。
怖いよ…酷いよ…ツナ君…。


「ツナ君聞いて!皐月ちゃんは何もしてないの!!」


何度この言葉を言ってきただろう。
花と一緒に何度も訴えてきた。
でもツナくんは聞く耳を持ってくれない。


「京子ちゃん…嘘つかなくて、もういいんだよ?」


憐れんだように目を向けてくる。
みんなも同情の眼差しで見てくる。
そんな目で見ないで!私は脅されてなんかいない!!


「黒羽なんか二度と京子ちゃんに近づけさせないから、安心して」


そう言っていつものように微笑んでくれたけど、昔みたいに安心できる笑顔ではなくてただ怖いだけだった。


違うよ、ツナ君。
黒羽ちゃんは私を助けてくれた大切な友達なの。
全部全部百花ちゃんが仕組んだことなの。
でも皐月ちゃんは優しいから、私たちが巻き込まれないようにわざとああ言ってくれたの。



お願い聞いて!私の話を聞いて!




「私の…親友を…これ以上……傷つけないで…!!」




私の悲痛の叫びは誰の耳にも届かない。
みんな狂ったみたいに黒羽ちゃんを傷つける。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い


「どうして…」


これじゃあまた葉月ちゃんの時と同じになってしまう。


「わたしは…また何もできないの…?」


花も私と同じ表情だ。
皐月ちゃんには全く近づけない。
電話もメールもつながらなくなった。
私たちにはもう…助けられないっ!!


「京子…あれ…」


花が指差した先にはまたリンチにあっている皐月ちゃんがいた。
窓からその光景を見ていて、頭痛がする。
心が爆発寸前みたいにギシギシと音をたてているきがした。
助に行きたいとは思っても、ツナ君たちが怖くて足が動かない。
何も出来ないままただずっと見ていると、雲雀さんが皐月ちゃんの元に行ったのが分かった。
みんなは蜘蛛の子を散らしたみたいにその場からいなくなって、皐月ちゃんは雲雀さんに抱き起こしてもらってた。


「良かった…」


花が呟いて、私の心も軽くなる。


「雲雀さんは味方みたいね」
「うん、雲雀さんなら大丈夫だね」



これで私は何もしなくていい



「(えっ…今、私なんて思った…)」


ほとんど無意識に考えたことに自分自身鳥肌がたった。
雲雀さんが皐月を助けたのを見て安心した。
でもそれは助けられたことに対してじゃない、私が助けにはいらなくてもいいという安心感だった。


「(私、皐月ちゃんを…見捨てようとした…)」


体から血の気が引く程ぞっとした。
味方だ、友達だと言っておきながら何もしていない自分にようやく気付いた。
ツナ君たちに必死に言った?
言っただけじゃないか、何も行動なんてしていない。


「花、私…私…!!」
「京子?」


真っ青な私を見て花がびっくりしている。
上手く息が出来なくて、花に支えてもらってやっと立ってる状態だ。


「葉月ちゃんは大切な友達だった。でも、怖くて助けてあげようともしなかった。」
「…それはあたしも同じよ。見てるだけ、何も出来ない自分が悔しくて、でもあたしじゃなくて良かったって思ってた」


花が歯を食いしばって心底後悔している顔をする。
「だからこそ、今度こそ助けるって誓ったのよ」って花は言う。
私もそう思ってた。考えてた。
屋上で泣いたあの日からそう心に誓った。


「今も!私たち同じことを繰り返そうとしてる!!また見てるだけじゃない!!」


感情が高ぶって涙が出てくる。
でも今この気持ちを吐き出さないと、私は前に進めない。


「強くなりたい!今度は私が助ける!!」


心臓が興奮で大きく暴れる。
そのまま花の手を振り払って皐月のところに行こうとした私を花は引きとめた。


「落ち着きなって、京子!」
「離して!皐月ちゃんのところに行かないと…!!」
「京子!!」
「(ビクッ」


花の大きな声に反射的に体が止まった。
しっかりと私の肩を掴んで目線を私に合わせた花はとても真剣な目をしていた。


「京子の気持ちはよく分かったわ。あたしも間違いに気付いた、変わるのは今しかないってこともね。だからこそ、確実に皐月を助けられる方法を考えないといけないの!分かる?」


花の言葉で自分がようやく冷静さを失っていたのが分かった。
私たちが下手に動くと、皐月ちゃんにまた危害が加えられるかもしれない。
花はそう言いたいんだろう。


「ごめん、花…」
「いいのよ、京子がしなかったらあたしが同じようなことをしていたわ。」


大きく深呼吸して暴れていた心臓を押さえつける。


「私たちに何が出来るかな?」
「まずは味方を増やさないと…それに、百花がしたことの証拠もいるわね」
「ツナ君たちの誤解も解かないと」
「何かいい方法ないかしら?」
「でも、ツナ君たちに離してもまた聞いてもらえないかも…」
「そうね、せめて私たちの話を聞いて、沢田たちにも意見を言える人がいいわ」


そう言われて一人の顔が思い浮かんだ。
この人以外いないってほどピッタリの人がいる。


「花!私…!!」
「!!…沢田たちにはあたしからもう一度言ってみるわ。駄目でもしてみないとね。だから京子は自分がしたいことをしなさい」


花には言わなくて分かってくれたみたいだ。
親友っていいものだなってこういう時に思う。
ねぇ、皐月ちゃん。私は皐月ちゃんともこういう仲になりたいの。
今からでもなれるかな?


花に手を振って廊下を駆け抜ける。
もう心は痛まない。
皐月ちゃんを助けたいという闘志だけが湧いてくる。




何が出来るか分からない。
でも犯した罪を改めるときは今しかないんだ。




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