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浮かれてた。

初めての友達ができて気を抜いていた。

どうしてウチがここにいつのか忘れてたんだ。


2人がいない教室、携帯に表示される「京子」の文字。

送られてきたメールを見た瞬間、頭の中が後悔で支配された。

「クソッ…!」



メールには「理科室」という文字と……










ボロボロになった2人の写真が付いていた。




「2人は…関係ないのにっ…!」

登校してきたばかりの生徒の波を掻い潜って全力で走る。
途中、沢田達と目が合った気がしたけど、今は気にしてられない、ただ2人のことが心配だった。




≪バンッ≫

「京子!花!」

理科室に飛び込むと暗闇の中僅かに血の匂いがして、微かに息の音がする。
匂いと音の先には写真通り、壁に寄り掛かって座る2人が見えた。
急いで駆け寄ると、気絶しているようで反応はない。

「もぉー皐月ちゃん遅いよ〜」

いつもみたいに間延びした声に振り向けばニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべる西園寺がいた。

「あんまり遅いから京子ちゃんも花ちゃんも寝ちゃったよぉ」

「西園寺…!!」

「クスクス、皐月ちゃんこわ〜い♪」

完全にふざけている態度に激しい怒りを覚える。

「2人は関係ないじゃろ!!」

「何言ってるの?この2人はあたしに逆らったのよ。罰を受けるのは当たり前じゃない」

「ふざけんな!!そんな理由で人を傷つけていいわけない!!」

怒りに任せて西園寺の胸倉を掴んでも、まったく動じる様子も無い。
それどころか掴んだウチの手に爪を喰い込ませてきた。

「っ…!」

「皐月ちゃんは頭が良いから、どうすればいいか分かるよねぇ?」

「なにを言って…」

≪ドタドタドタ≫

「百花ちゃん!大丈夫?!」

ウチが西園寺の言葉に疑問を持っていると。慌てた様子でクラスの奴らがきた。

「なんだよ、これ…」

傷ついた京子たちを見て、何が起こっているのかまだよく分かっていないようだ。
ウチもどうして皆がここにいるのか考えたいけど、頭が回らない。
そうしてると西園寺はウチの手を振りほどいて駆けていった。

「皐月ちゃんが…京子ちゃんたちを殴ってて…あたし止めたんだけど、あたしも殴ろうとしてきて…怖かったよぉ!!」

「またお前か、黒羽!!」

「酷い!女の子をこんなに傷つけなくてもいいじゃない!!」

「百花ちゃんがメールしてくれなかったら、どうなってたか…!」

口ぐちに浴びせられる非難の声の中で、止まっていた頭がゆっくりと動き出す。
西園寺はみんなの陰で笑っていた。

「(あぁ、そういうことか…)」

ウチは罠に嵌められたみたいだ。
これからどうすればいいのかも分かる。




これは罰。何も知らないフリをして2人の傍にいたウチが悪いんだ。
脅されていたことも嫌がらせをうけていたことを全部分かってたいたのに、2人の優しさに甘えた結果がこれだ。



「本当なの…?黒羽さん…」

沢田が厳しい目で見てくる。
当然だよな、好きなんだから…なんて自分でも驚くぐらい冷静になっていく。
罠に嵌められたことは悔しいけど、もう乗るしか道は残されていない。

深く深呼吸。
大丈夫、自分の気持ちを押し殺すなんて今までだってたくさんあったじゃないか。
そう言い聞かせて、出来るだけ残忍に見えるように笑顔を作った。

「あぁ、本当じゃ。2人共鬱陶しいぐらいくっついてくるから苛々してたんじゃ、だから殴った。で、どうせなら西園寺のせいにしようとした。」

用意された台本を読むみたいに淡々と言えば、沢田の顔をみるみる歪んでいった。

「っ…なんだよそれ…京子ちゃんも黒川もずっと信じてたのに裏切るなんて…ふざけんな!!」

≪バキッ≫

沢田に思いっ切り殴られて、机に叩きつけられた。
口の端からは血が出て、体の節々が痛い。
まさか沢田がこんな行動に出ると思ってなかったのかみんな唖然としている。
沢田はそんなの気にせずに転がるウチを軽蔑しきった目で見ていた。

「京子ちゃんが信じてたから俺は見てただけだったけど、お前はもう敵だ!黒羽、京子ちゃんを傷つけた分俺らがお前を追い詰めてやる…!!」

「沢田…」

「俺らの仲間を傷つけたんだ、ただで済むと思うなよ!」

「獄寺…」

「流石に笑って許せねーな」

「山本…」

今まで見たことない目で3人は見てくる。
少し胸が痛んだけど、京子と花を思うと耐えられる痛みだった。

「俺は…仲間を傷つける奴は絶対許さない!」

みんなにボコボコに殴られた後、そう言って沢田はみんなを引き連れて出ていった。
京子と花はちゃんと保健室に連れて行ってもらえるみたいだ。

「ごめん…京子…花…」

ずっと2人の傍にいたいけど、もうウチにそんな資格はない。
守るって言ったのに2人を傷つけてしまった。

「ウチは…弱い…」

何も出来ない悔しさに唇を噛む。
2人を守れなかった…悔しいし悲しいはずなのに、こんな時でもウチは涙が出せなかった。









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