13


数日前から悩んでいることがある。



「ウチは京子たちに葉月のことを話したほうがええんじゃろうか?」

「僕には関係ないよ。」

「雲雀は冷たいなー」


ここは応接室。
最近はよく授業をサボってここに入り浸ることが多くなった。
今日も体育の授業を抜け出している。

雲雀は相変わらず忙しそうで、ウチと話している時も忙しなく手を動かしていた。

「僕は鳥羽葉月のことを知っているから興味が湧かない。それにどうせ僕がどう言っても皐月は素直に聞かないだろ?」

「まぁ、そうじゃけど…」

確かに助言が欲しくて言ったわけじゃない。
ただ柄にもなく不安になっていて、誰かに聞いてほしかった。

「京子と花はウチの友達じゃ。だから傷つけたくない…」

クラス中から虐められていても、変わらず傍にいてくれる二人。
そんな優しい二人が大好きだからこそ離れてしまうのが嫌だった。

「…そこで暗くなられると鬱陶しいんだけど」

「んー…」

「ハァ…皐月がそこまで信頼しているなら鳥羽葉月のことぐらいで離れるとは思わない。その二人のことを少しは信じてみたら?」

雲雀が溜息交じりに言ってくれた言葉がウチの胸にストンと入る。
自分のことばかり考えてて、ウチは二人の優しさを全然信じてなかった。

「それもそうじゃな…うん、やっぱり話してみる!ありがとう雲雀!!」

善は急げ。
ウチは応接室を飛び出して授業中にも関わらず、廊下を駆け抜けた。






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教室につくと授業は既に終わってたらしく、制服に着替えた生徒が出入りしていた。
そのなかで仲良く話している二人を見つけて、思わず二人の手を後ろから思いっ切り掴んでしまった。

「わぁ!皐月ちゃん?びっくりしたー」

「どうしたの?そんなに息切らして。」

笑顔でウチに話掛ける二人を見て、また不安になる。
でも雲雀のおかげで少しだけ気持ちが楽だ。
息を整えるためにゆっくり深呼吸をして二人の目をしっかり見た。

「京子、花、二人に話がある。」











〜side京子〜

私たちに話があると言って、皐月ちゃんは屋上に行こうと言った。
終始無言で歩く、皐月ちゃんは少し辛そうに見えた。

百花ちゃんに何かされたのかな?
皐月ちゃんは凄く優しいから私たちのことをいつも心配してくれる。
もしかしたら私たちが虐められないように、私たちを遠ざけるのかもしれない。
それぐらい皐月ちゃんは私たちを守ろうとしてくれる。

でも…私はそんなの嫌だよ…。

「皐月ちゃん!!」

屋上についても無言で俯いていた皐月ちゃんに声をかけると辛そうな顔で私を見た。

「私はずっと皐月ちゃんの味方だからね!!だから…私たちを守ろうとしてくれなくてもいいんだよ?」

こんなに大きな声を出したのは久しぶりかもしれない。
たとえ違う話だったとしても、これだけは言わないと気が済まなかった。
私が急にこんなことを言ったから皐月ちゃんも花も目を丸くしていた。

「京子…急に何言ってるのよJ」

「だって、皐月ちゃんが辛そうに見えたから…」

「ウチのこと心配してくれたんじゃね、ありがとう」

そう言って皐月ちゃんはさっきとは違って優しい笑顔を向けてくれた。

「京子のおかげでやっと話す決心がついたよ」

そして皐月ちゃんはゆっくち話してくれた。
自分があの葉月ちゃんと双子だということ、葉月ちゃんが入院しているということ、なぜこの学校に来たか全部話してくれた。


驚いたけど、妙に納得出来た。
だって思い返すと皐月ちゃんの笑顔は葉月ちゃんにそっくりだったから…

「ウチは京子のことを西園寺に近づくきっかけに利用したようなもの…だからずっと言うのが怖かった。」

「二人に嫌われたくなかった」と弱弱しく呟いた皐月ちゃんを見て胸が苦しくなる。
するとずっと俯いてた花が震えてると思ったら顔を勢いよく上げた。

「そんなことで嫌う訳ないじゃない!!」

「花…」

「利用したとか皐月が勝手に思ってるだけよ!皐月は京子を助けてくれた!私たちの大切な友達よ…」

怒っているような、哀しんでるようなどちらともいえない声で涙ぐんでいる花を見て、私も泣きそうになる。

「そう言ってくれて凄く嬉しいよ…花。」

皐月ちゃんも少し目が潤んでいるように見えた。
私はなんだか耐えきれなくなって皐月ちゃんに抱きつく。
花も私を見てすぐに来た。

「私…謝らなきゃ…葉月ちゃんのことを助けなかった。」

一年生の時からずっと仲良しだった葉月ちゃん。
でも百花ちゃんに虐められ始めてから私は怖くて近づきもしなかった。
それに私も葉月ちゃんのことを疑ってた。
なんで百花ちゃんを虐めるのか分からなかったけど、あの優しい彼女がこんなことをするんだと思って裏切られた気分でいた。
私も虐められて初めて分かった。
あんなに辛かったんだって…

葉月ちゃんはずっと一人で耐えてたんだ。

「誰だって自分が一番可愛い。だから京子を責めるつもりはない…花もじゃ。」

「皐月ちゃん…ありがとう…!!」

私も花も涙が止まらなかった。
やっぱり皐月ちゃんは優しすぎるよ…!!
大切な妹が傷ついて辛いはずなのに、見捨てた私たちを許してくれる。
その無償の優しさがいつも私を幸せにしてくれる。

「(私、皐月ちゃんと友達になれて本当に良かった…)」




その日はお昼まで私たちはずっと抱き合って泣いていた。






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