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≪ピッピッピッピッ≫
静かな病院の一室で、無機質な音が一定で響く。
目の前のベッドにはしばらく会っていなかった、自分の片割れが眠っている。
元から白い顔はさらに白くなっていて、体中には細かい傷が沢山あり、華奢な体が体調の悪さを引き立てていた。
そんな片割れの姿が、会わなかった間何があったか物語っている。
片割れの名前は鳥羽葉月。
両親の離婚で離ればなれになったが、3年たった今でも定期的に連絡を取り合い、会っていたりした。
葉月が話す事はいつも学校の事で、話している葉月の幸せそうに笑う姿はとても綺麗だったのは記憶に新しい。
そんな葉月が連絡を絶ったのは3ヶ月前だ。
連絡が来なくなる事はよくあったが、こんなに長いのは初めてで、そろそろこっちから連絡しようと思っていた時だった。
葉月から電話が来たのは・・・。
時刻は真夜中の2時。
久々に聞く葉月の声は生気がまるで無く、死人のような声をしていた。
何があったのか問いだそうとしても、葉月が一方的に話して、電話を切られた。
そして葉月はビルの屋上から飛び降りたのだ。
今は午前5時。
あの後葉月は運良く通った人に見付けられ助かり、並盛病院に運ばれた。
幸い死ぬ事は無かったが、医者の話では肺の機能が低下していて、いつ死んでもおかしくないらしい。
「馬鹿が……」
自ら命を断とうとした葉月に言ったのか
こんなになるまで気付かなかった自分に言ったのか
よく分からないまま、ウチの声は誰にも聞かれることも無く、病室の壁へと溶け込んでいった。
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