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あの件から5日…たった5日しか経っていない。

でもすでに虐めはエスカレートしていた。


最初は私物が無くなったり、机に落書きなど悪戯程度のことだったけど、最近では殴る、蹴るが当たり前になってきた。



今も屋上でウチは数人に囲まれてリンチされている。


「調子に乗るなよ!また西園寺を虐めやがって!!!」

≪ドスッ!≫

「グッ…」

腹に入れられた蹴りのせいで、吐き気が込み上げてくる。
もう体中を殴られていて、所々血が滲んでいた。

≪バキッ≫

≪ドカッ≫

「あんたなんか生きている価値が無いのよ!」

「おい、顔をあんまり殴るなよ。目立つだろ」

「ハハッ、別にこいつの顔なんて誰も見ねぇよ」

「……それもそうだよなぁ!!」

≪バキッ≫

罪悪感なんて欠片も感じてないのか、笑いながら殴ってくる。
まるでおもちゃで遊ぶ子供みたいだ。

進んで抵抗していないとはいえ、ここまでいいようにされたら流石に悔しい。

それでも葉月を思って、奥歯を噛み締めて耐えた。

≪グイっ≫

「っ…!」

「謝る気になったか?!!」

髪を引っ張られて、床に這いつくばる格好になった。
力が強いのか頭皮から嫌な音が聞こえる。
これは何本か抜けたな。

「ウチは…やって…ない…。」

「百花ちゃんよりあんたを信じろっていうの?ハッ…出来るわけがないじゃない!!」

「つい最近来たお前より、前から一緒にいる西園寺の方を信用するのは当然だろ!」

「そうよ!百花ちゃんが嘘なんかつかないのは傍で見てきた私たちが一番知ってる!!」

「(じゃあ、葉月は?)」

思わず出そうになった言葉をぐっと堪える。

葉月のときこいつらは転校してきたばかりの西園寺を選んだ。
葉月の方が何倍も一緒に時間を共有してきたのに誰も信用しなかった。

一緒にいるから信用できる?
傍で見てきたから嘘はつかない?
ただ西園寺の言葉を何も考えずに鵜呑みにしてそれを友情とか絆とか勝手に思い込んでるだけだろ!!!

≪ダンッ!≫

「い゛っ…!」

無意識に握りしめていた拳を上から踏みつけられて激痛が走る。
そのままグリグリと足を動かされ、隙間からは血が流れていた。

「謝れよ…。」

「フン…なん…で…?」

≪ドスッ≫

「ウッ!…ゲホッ!ゴホッ!」

足をどかされたと思ったら、また容赦なく腹に蹴りを入れられた。
息苦しくて上手く呼吸出来ない。
流石にやられ過ぎたみたいで意識が朦朧としてきた。

なんとか息を整えようとしていると、今度は胸倉を掴まれてフェンスに追いやられる。

「土下座して、許して下さいって嘆いたら許してやるよ」

「どうせなら教室の真ん中でやってもらおうよ!」

「いいね〜それ、俺たちにも謝ってもらわないとな」

下品に笑う声が響く。

反論しようにも口に溜まった血のせいで上手く声が出せなかった。

「なんとか言えよ!」

フェンスに押しつけられ、軽く首が締まった。

「(これは、ちょっとやばいな…)」

朦朧とする意識では思考能力が上手く働かない。
ここを切りだす方法なんて思いつきそうになかった。

「ねぇ君たち、うるさいんだけど」

ふいに聞こえた男の声。
前にいるやつらのせいで姿はうまく見えなかった。

「ひっ雲雀!…さ…ん…。」

雲雀?誰だ?それは…。

「僕の眠りを妨げる奴は何人たりとも許さない。」

「ヒッ!いっイ…ヤ…!」

「全員…







咬み殺す






締まっていた首が楽になったと思えば、あいつ等はもういなかった。

力が入らず崩れていく身体、虚ろな目で見えたのは黒髪で学ランを着た男。

「草食動物には興味ないよ。」


頭に鋭い衝撃が走る。



朦朧としていた意識はそこで完全に途切れた。





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