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「皐月ちゃん、おはよぉ。」

「あぁ、おはよ。」

屋上での昼食から数週間。
ウチは相変わらず西園寺の観察もとい監視を行っていたが、変わったところは未だに無かった。
でもウチには、あの時の笹川京子の真っ青な顔が頭から離れなかった。

「(当たってると思うんじゃけどなぁ…)」

「皐月ちゃん?どうしたのぉ??」

「いや、何でもない。早く教室行こう。」

心配そうにしている西園寺と教室に向かっていると、後ろから声を掛けられた。

「おはよう、黒羽さん、百花ちゃん。」

「おはよぉ、ツナくん♪」

声を掛けてきたのは、ハニーブラウンの髪を揺らす沢田。
最近は沢田を入れたいつもの3人組と西園寺と一緒に行動することが増えてきた。

「おはよ…沢田、今日は遅刻じゃないんじゃな。」

少しからかうように言えば、いつものように忠犬こと獄寺が突っかかってきた。

「てめぇ、10代目を馬鹿にすんじゃねぇ!!」

「ちょ、獄寺君!今のは冗談だって…」

「冗談でも、コイツは10代目を馬鹿にするような発言をしたんですよ!!おい!黒羽!!今日こそはお前を果たしt「はよっ、黒羽。」

耳元で怒鳴る獄寺を軽く流していると、いつものように爽やかな山本が来た。
数週間で山本とは、3人の中では一番気が合う奴だ。

「おはよ、山本。今日は少し寒いな。」

「あぁ、一雨来るらしいぜ。」

「って、無視すんじゃねぇ!!」

「なんじゃ、獄寺は短気じゃな。」

「イライラにはカルシウムだぜ♪」

「てめぇら…果たす!!」

怒って花火みたいなのを取り出す獄寺と、それを必死に宥める沢田。
そんな二人をウチらは笑って眺めてた。
この時間がすでにウチには日常になっている。

でも、このとき気づけば良かったんだ。
既にウチには明らかな敵意を向けられてたことを…。


≪ガラッ≫

「おはよぉ、みんなぁ♪」

西園寺が勢いよくドアを開けると、教室の中はざわついていた。
全員が西園寺の机の周りに集まっているようだ。
教室の雰囲気の様子がおかしいことに気付いたウチ達は直ぐに駆け寄ってみる。

「どうしたのぉ?」

「あのっ、百花ちゃん…これ…。」

視線の先の机には“死”と大きく彫られた周りに“キモイ”“ウザイ”“ブス”と黒く書き殴られていた。

「私達が来たときには、もうなってたの…。」

「こんな酷い事、誰がやったんだろう…。」

側にいた奴が事の経緯を説明すると、西園寺は思い詰めたような表情で、「もしかして…」と話しだした。

「京子ちゃんかもしれない…。」

「「「えっ!?」」」

教室全体に衝撃が走った。

「あのね実はあたし、京子ちゃんに酷いこと言われたのぉ…。」

ポツポツと話し始める西園寺を皆は黙って見守っている。

「ウザイとか一杯言われて…『あんたなんか嫌い』って言われちゃった…。あたし何かしたのかなぁ…。」

目を潤ませ、いつものように語尾を伸ばした声を出せば、クラスの連中は思い思いに慰めの言葉を掛けた。
沢田達はまだ困惑してるのか、連中の中に入っていない。
かくゆうウチも、この一騒動をただ傍観している。
≪カラ、カラ≫

タイミングが悪いのか、いいのか、笹川京子が黒川花と共に教室に来た。
クラス全員が笹川京子の方へ意識を集中させ、それぞれ色んな意味の視線を送っていたけど、恨みを込めた視線が多かった。

「お、おはよう…。」

教室の空気を感じとったのか、少し怯えた様子で律義にあいさつをする笹川京子。
隣にいる黒川花は守るように一歩前に出た。
二人は本当に仲がいいらしい。

「おい、笹川。」

「なに?」

「お前、西園寺に謝れよ!!」

おそらく西園寺に気があるのか、率先して一人の男子(嶋岡とかいったか)が笹川京子に詰め寄った。
嶋岡に挑発されて、他の奴らも口ぐちに詰め寄る。
何のことかわからない彼女はただオロオロとしていた。

「ちょっと!京子が何をしたのよ!」

「笹川が西園寺の机に落書きしたんだろ!!」

黒川花が庇うと、またも嶋岡が怒鳴る。
笹川京子は既に半泣き状態になっている。

「京子ちゃんがそんな子だとは思わなかった!」

「私、やってな…い…。」

「百花ちゃんに謝りなさいよ!!」

「京子はそんな事しないわよ!!」

責める言葉や否定の言葉が飛び交い、教室はこれでもかというくらい騒がしくなってきた。




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