2.5


「中二になってからね、西園寺百花ちゃんって子が転校してきたの。金髪の巻き髪でカチューシャしてて、凄く可愛い子でね。転入してきた時は凄く仲良かったの。」

ゆっくり思い出すように話す葉月。
握っている手の震えは未だに止まらない。

「転入してから1週間ぐらい経った時だったかな?百花ちゃんがね、凄い怪我をして学校に来たの。心配して声掛けたらクラスの子達が”お前がやったんだろ!”って言って・・・。私が違うって言っても誰も信じてくれなくて、そこから虐められるようになったの。最初は靴隠されてただけだったんだけど、段々エスカレートして殴られたりするようになって・・・。」

その時の恐怖を思い出したのか、肩を抱え込み震えてる葉月の頭をそっと撫でれば、ウチの方を見て安心したようにそっと微笑み、深呼吸を一つしてまた話し始めた。

「凄く辛かったし怖かったけど、信じてくれる人もいたから私頑張れたの。クラスの皆もねいつか誤解が解けて、きっとまた皆で仲良く出来るって信じれたの。”あの日”さえ来なければ、信じていられたのに・・・。」

「葉月?」

話している途中葉月は遠い目をして黙ってしまった。

「ごめんね、皐月ちゃん。私まだ信じられなくて、これ以上は話せない。」

俯いて言って何かに耐えるように唇を噛み締めた。

「(西園寺百花か・・・。取り合えずその子が何か知っとるな。もしくはその子が黒幕か)」

一人思案していると、葉月が心配そうに顔を覗き込んできた。

「皐月ちゃん?難しい顔してどうしたの?」

「いや何でも無い。なぁ葉月、また学校行きたいか?」

「行けるものならね、また皆と仲良くしたいなぁ。」

病室の窓から空を見上げ、愛しそうに言う。
きっと葉月にとって並中に居ることは一番の幸せだったのだろう。
ウチは大切な妹の悲しそうな顔はもう見たくない。
だからウチに出来ることは・・・。

「葉月。ウチがまた並中に通えるようにする。」

「えっ!?」

「ウチは葉月の悲しそうな顔はもう見たくないけぇな。ウチがなんとかする。」

「・・・いいの?」

不安そうにウチを見る葉月に微笑んで、ウチは言う。

「あぁ、約束じゃ!」

夕日をバックに嬉しそうに微笑んだ葉月と指切りをした。

もう彼女の手は震えてなかった。




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