「あれ、チョコもうなくなってる」

閻魔七つ道具の入ったカバンを開け、落胆する。

甘い物が好きな俺は、いつもカバンの中にあるアメやチョコを食べる。

だがいつの間にか食べてしまったようで、あるのは包み紙だけ。

「鬼男くーん」

本棚を整理している秘書に声を掛けると、背を向けたまま返事が返ってきた。

「何ですか?」

「お菓子なくなったから下界に行ってきていい?」

「駄目」

「即答!?」

なら今日はご褒美無しで過ごせと言うのか、あんまりだ!

「ひどいよ鬼男くん!お菓子は俺の唯一の楽しみなのに!」

わあわあと騒いでいると、大きな溜め息をつき鬼男くんが振り返り、こちらに歩み寄ってきた。

「そんなに口寂しいんですか?」

「ふえ?」

次の瞬間、鬼男くんの顔がアップになって唇に柔らかいものが触れた。

思わず開いた唇の隙間から熱い舌が差し込まれる。

「んんっ…ふ…」

舌と舌が絡み合う水音が耳を犯していく。

「っは…おに、んん…っ!」

噛み付くように、それでいて熱く、優しい口付けにもう何も考えられなくなってしまう。


やがて銀色の糸を引いて、ゆっくりと唇が離された。

「っ…はぁ、も、いきなり何すんの…」

乱れた息を整えながら軽く睨みつけると、少し間が空き「でも」と鬼男くんが続ける。

「これでもうチョコなんかいらないでしょう?」

「っ!」

「今度からこれご褒美にしましょうか」

「…っな、何言ってんの!それでいい訳な…」


言い終わる前に再び唇が塞がれる。

さっきまでとは違い、ゆっくり口内を舌で蹂躙されていく。


――逆効果だよ鬼男くん、こんなの甘すぎて、依存しちゃうよきっと。


(鬼男くんのばーか)



心の中でそっと呟き、彼の肩に腕を回した。




チョコの代わりに
何十倍も甘いキス




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