『Q.馬鹿で泣き虫でセーラー服趣味な変態上司をどう思いますか?』


『A.死ねばいい』


「わざわざフリップ使って自問自答しないでよ!」

目の前で当の上司が叫ぶ。

叫びたいのはこっちの方だ。仕事したくない、おやつ食べたい、セーラー服欲しい、なんて面倒な3コンボだ。こんなのが閻魔大王だなんて死者はびっくりするだろう。何しろ僕が一番びっくりしたんだから。

秘書に任命された日から僕の生活は見事に狂いっぱなし。もう秘書というより世話係だ。ほら、学校で問題児とちょっとでも仲良くなるとそいつ係になっちゃうみたいな、そんな漫画を読んだことがある。まさにそれだよ。

こうやって考えてる間にもまた、大王は閻魔七つ道具からセーラー服を取り出している。軽く刺してやったら泣かれた。
ひどいよ、ひどいよって泣きじゃくる様子は幼い子どものようだ。
こんな奴が閻魔大王だって?誰か嘘だと言ってくれ。僕の人生を救ってくれ。もうこれ以上振り回されたくない、はっきり言おう僕はこの上司が大嫌いだ。




なんつってな。

分かってるんだ本当は。
アンタという存在がいつの間にか特別になって、その子どもみたいな笑顔に癒されて、アンタが僕以外の奴と仲良さげにしてるとイライラして。この感情が一体何なのか、ちゃんと分かってる。

だけど。

「もー鬼男くんのばか、あほ、悪魔、冷血、ばか、ばか、ばか」

悪口のレパートリーが尽きたのか、涙を流しながらばか、ばかと繰り返している。

「…大王、さっきの本当の答え、言ってあげましょうか」

「っ!お、教えて教えて!」

涙で顔はぐしゃぐしゃなのに、赤い瞳だけはきらきら輝かせて。
マジで大王なのか、コイツ。

「……やっぱ言いません」

「えーっ!!」

「つか早くセーラー服しまえ、そして仕事しろ」

「ほんとに鬼だなきみは!」



『Q.馬鹿で泣き虫でセーラー服趣味な変態上司をどう思いますか?』


『A.どこの誰よりも大好きです』






unrequited love
(届かないってこういうことか)



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