鬼男くんの手が好き。
大きくてちょっとゴツゴツしてて
俺の手をぎゅっと握ってくれる
その手が大好き。

あ、でも指が一番好きかも。
長くて、いい具合に細くて…



「一言で言うならまさに『理想の指』って感じ!」


おやつのチョコケーキを食べながら言う。

鬼男くんはケーキじゃなくコーヒーを飲んでる。


「しかも鬼男くんの指さ、人差し指よりも薬指の方が若干長いでしょ?それって男性ホルモンが多いっていう意味なんだって!」


「…つまり男らしいということですか?」

「そういうことー!」

「へぇ…」

なるほど、と呟いて自分の左手をまじまじと見つめる鬼男くん。

俺もケーキを口に運びながらちらっと見る。
あぁ、やっぱりかっこいい指だな。
あれで爪が伸びなかったら本当に結婚したいくらい…


「そういえば大王知ってますか?」

唐突に鬼男くんが切り出した。

「へ、何を?」

急に声を掛けられて間抜けな顔になっているであろう俺の顔を見、一呼吸置いて続ける。


「男の指と性器は同じ遺伝子で作られてるらしいですよ」

「ぶふっ」


今口の中にケーキがあったら盛大に吹いていただろう。危ない危ない。


「何言い出すんだ君は!」

「遺伝子科学でそうなのかもしれないと言われてるんです、つまり大王は無意識に僕を求めてるってことになりますね」

「は、はぁ!?」


何それ。何それ何それ何それ!!
なら俺は今まで鬼男くんの指を見て、知らず知らずのうちに興奮してたってこと?超恥ずかしいじゃん俺!


などと悶えていると、いつの間にか鬼男くんが俺の目の前に立っていた。


「な…なに…」


俺の問いには答えず、ゆっくりと顔を覗き込むように近付くエメラルドグリーンの瞳。

その瞳に捕らえられると動けなくなるのを鬼男くんは知ってる。
知ってるからずるいんだ。

やがて、長くて綺麗な指がそっと唇に触れる。

キスかと思ってぎゅっと目を瞑ると、何故かその親指はぱっと離れた。


不思議に思い目を開けると、


「クリーム、ついてましたよ」

そう言って親指についたチョコクリームを舐めとった。

(うわ、なんかすごく絵になる…)

ぼーっと見つめていたら鬼男くんにクスッと笑われた。

「キスじゃなくて残念?」

「なっ!!」

「あんた今そんな顔してる」

「……っ!!」


「お、図星」

「っち、違うもん!そんな訳ないじゃん!」

慌てて否定すると「ふーん?」と意地悪な笑みを浮かべ、再びコーヒーに口をつける。


悔しくなりながらついマグカップの取っ手を握っている指を見つめていると、鬼男くんに「相当好きなんですね」とまた笑われた。




惹かれる、見つめる
君の指限定だけどね




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