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会場の扉が開き脱獄犯が出てきた。口を開こうとすると銀ちゃんが私の少し後ろから現れた。(…何で私がここに残ったのか、銀ちゃんはやっぱり気付いてたんだ)
「涙のお別れはすんだか?」
「…バカヤロー。お別れなんかじゃねェ。必ず会いにくるさ。…今度は胸張ってな」
銀ちゃんの言葉に脱獄犯は泣きながら答えた。それに笑うと建物を後にした。脱獄犯は自ら警察所へと帰っていった。私たちは見送った後、家へと続く道を歩いた。
『寺門通は親に大事にされてるね』
「……」
『何?辛気臭い顔して』
「…あんなん見たら辛ェだろ。なんで早く帰らなかったんだよ」
『…最後まで見届けたかったから』
私はそう言って笑った。
『それに、私辛くなんかないよ。本当の親は私を捨てたけど、今は片岡さんとお登勢さんを私は親だと思ってるし』
寧ろ幸せだよ。なんて言って笑うと銀ちゃんは私を抱き寄せた。突然のことに私は少し驚いた。
『…銀ちゃん?』
「辛ェなら泣け」
『…だから辛くなんか』
「泣けよ」
『っ……』
銀ちゃんの言葉に一気に涙腺が緩むと洪水のように涙は溢れ出した。
本当は、辛かった。片岡さんとお登勢さんのおかげで不自由なことはないし、育ててくれたことを感謝している。だけど、本当の親に捨てられたことは今でも辛い。(…こんな思い出なんか消したい。私の親は、片岡さんとお登勢さんだけ)