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屋根から飛び下りてきた男は脱獄犯らしい。男は神楽ちゃんを人質にとり、今現在、銀ちゃんに車をある場所まで運転させている。
『何で私まで…しかもまた捕まりそうな事してるし』
「…おじさーん。こんなことしてホントに逃げきれると思ってんの」
「いいから右曲がれ」
「今時脱獄完遂するなんざ宝くじの一等当てるより難しいって」
『諦めたらー?』
「逃げ切るつもりなんてねェ…今日一日自由になれればそれでいい。特別な日なんだ。今日は…」
男はそう言いながら窓の外を眺めた。その目が何だか切なく見えた。
【みなさーん!今日はお通のライブに来てくれてありがとうきびウンコ!】
「とうきびウンコォォォ!」
だがそれは思い違いだったか。着いた場所はアイドル、寺門通のライブ会場だった。呆れた私と銀ちゃんは帰ろうと思ったがそこには見覚えのある顔がいた。
「オイ、そこ何ボケッとしてんだ声張れェェ!」
「すんません隊長ォォ!」
『新八くん?』
「オイ、いつから隊長になったんだ」
アイドルには必ずしもファンクラブがあるものだ。寺門通にもファンクラブがあり、その隊長が新八くんだった。