Rocky and Funny!! | ナノ






「あら」



その時、後ろから聞き覚えのある声が私達の背中へと降りかかった。振り向くとそこには、大江戸ストアの袋を下げたお妙さんがいた。

『あ、お妙さん』
「なまえチャン、久しぶりね。銀サンもお仕事中ですか?暑い中ご苦労様です」

ニコニコと笑うお妙さんに、チラと銀ちゃんを見ると何故か冷や汗を流しながら私の腕を引っ張ってそそくさと歩き出した。

「あの…子守みたいなの頼まれてな。じゃ!」
『(ヒソヒソ)ちょっと銀ちゃん?なんで急に逃げるみたいに…』
「(ヒソヒソ)あいつと関わると面倒でろくな事ねーって!」
「あ、ちょっと待って銀さん。良かったらアイスでも召し上がって下さいな。スイマセーン」
「!」

何をそんなに怖れているのか、(いやまァ気持ちはわかるけど)銀ちゃんは急ぎ足で歩みを進めていたが、不意にお妙さんに呼び止められて、ビクリと肩を震わせながら立ち止まると、恐る恐るお妙さんへと振り向いた。お妙さんは機嫌がいいのか気前の良い言葉を銀ちゃんに放つと、駄菓子屋に入りアイスを買い始めた。

「あっいーよ!おかまいなく…!(ヒソヒソ)なまえ!いくぞ!」
『えっ、わっ』

再び私は腕を引っ張られて、急いでその場から逃げ出した銀ちゃんに引っ張られていく。




「待てって言ってんだろーが!!」




「うおっ!!」
『ぎゃっ!!』


パンッ!!


逃げ出した銀ちゃん目掛けて、お妙さんは威勢の良い怒号を放つと、今しがた買ったあずきバーを銀ちゃんに勢いよく放り投げた。(何で私までこんな目に!?)私と銀ちゃんは突如襲いかかってきたあずきバーを間一髪で避けきると、あずきバーはそのまま私達の背後にいた人の顔面へとクリーンヒットした。(うわ…可哀想)

クリーンヒットしたあずきバーは一瞬にして溶け、顔面からズルズルと落ちていくと、現れたのは以前忍者としてお世話になったさっちゃんだった。

「オ…オイ。大丈夫か?」
「……!!?」

さっちゃんは、銀ちゃんを見るや否や、そばにいた赤ん坊へと目を移し、すぐさま私とお妙さんを見遣った。(嫌な、予感)



「…そうなんだ」



そして、何かを悟ったかのようにさっちゃんが言葉を漏らした。(待て。待て待て)
「そうだったんだ、あなた達」
「?」
『(ヒソヒソ)銀ちゃん今こそ逃げ――』
「そーいう関係だったんだ」

私はメチャクチャ嫌な予感を走らせ、逃げるのは今だと言おうとしたがさっちゃんに遮られてしまう。

「…バカみたい私、何も知らないで一人で…まるでピエロだわ。そうやって、私の気持ち弄んで楽しんでたんだ。まさか二人のどちらかがとっくに子供をこさえる間柄だったなんて」

勝手に涙ぐんでいるさっちゃんに私達は言葉も無く呆然と立ち尽くしていた。が、お妙さんが異議ありと一歩前に出るとニッコリと笑って口を開いた。

「猿飛さん?何を言っているの?私な訳ないでしょう?頭かち割るわよ」
『ちょっと待ってお妙さん。それじゃ必然的に私の子供みたいになるんだけど…!さっちゃん!私も違うからね!』
「もういいわ。もうホントにいい。どうせどっちの子供か揉めてたんでしょ?バカみたい…私ホントバカみたい」
「バカみたいじゃなくてバカだろお前。ホントバカだろ」
「もうどんなに蔑まれたって何にも気持ち良くないわ!SMプレイは終わり!いつまでも彼氏ヅラしないで!」
『…銀ちゃんそんなプレイしてたの?』
「する訳ねェだろォ!!俺がいつお前の彼氏になってSMプレイをしましたか!!」
「アナタ達なんか、バンバンバンバン子宝に恵まれて大家族になればいいのよ!障子が穴だらけの家に住めばいいのよ!サヨウナラ!勝手にお幸せに!!」

さっちゃんは、最早銀ちゃんの言葉などまるで聞こえていないのか(いつも聞いてない)もういいのよ!と叫び走り出した。


「ってさせるかァァ!!」


「んだよコイツ!!面倒くせーよ!」
『一人でドラマやれるよ!!一人で映画一本とれるよ!!』

だが、すぐさまさっちゃんは振り返り、私とお妙さんへ襲いかかってきた。

「残念だったわね。お妙さん、なまえちゃん。女はね…子供を産んだ瞬間から女として見てもらえなくなるの。子を産んだ瞬間から、家族になってしまうのよ。少なくともアナタ達どちらかはもう女じゃないの。勝手に勝負から脱落していったのよ。お疲れ様。さァ!どっちが女じゃなくなったのかしら!?」
「だーからどの勝負よ!!私は産んでねーって言ってんだろーがァァ!!誰があのダメ侍の子供なんて産むかァァ!!」
『私だって産む訳ないよ!!産むならもっとイケメンで利口な人の子供がいい!』
「だったらあの子をどう説明するつもり?クリソツじゃない。天パといいあの目といい、クリソツじゃない」

何度言っても聞かないさっちゃんに痺れを切らしたお妙さんは銀ちゃんへと振り向いた。

「ねェ銀サン!なんとか言ってやってよ!その子仕事で面倒見てるだけなんでしょ!?銀さ……」

「え?」
「あぷ」



「クリソツじゃねーかァァ!!」

ドボォンッ!!



お妙さんが振り向いた先には、銀ちゃんがコソコソと逃げようと四つん這いになる姿があった。不意に話しかけられた事によりその状態のまま、こちらへと振り向いた時、背中に乗っていた赤ん坊までもがこちらへ振り返り、それはそれは瓜二つの表情を浮かべていた。そんな銀ちゃんをお妙さんは取っ捕まえると、勢いよく側の川へと放り投げた。

「相手が誰だか知らないけど隠し子がいたなんて最低だわ。それでも侍ですか。見損ないました」

銀ちゃんを放り投げ、パンパンと手を払うと置いていた大江戸マートの袋を手に取ると、その場から歩き出した。

「もう新ちゃんにも仕事辞めさせますから。なまえちゃんも、早いところ関わらないようにした方がいいわよ。行きましょ猿飛さん」
「『……』」

恐らく、本当に誤解だったのだと理解したさっちゃんと、銀ちゃんを川へ投げ飛ばしたお妙さんに驚いていた私は暫く言葉が出ないでいた。そのままさっちゃんはお妙さんの後を追いかけ歩いて行った。


『…オーイ、銀ちゃん大丈夫?』

残された私はと言うと、投げ飛ばされ静かに川の流れに漂う銀ちゃんへと声をかけた。

「…なんだ?なんで俺の周りは人の話を聞かねー奴ばかりなんだ?」

ス〜

「それはアンタも人の話を聞かねーからです」

ス〜

「…ああ、そうか」

銀ちゃんが遠い目で呟くと、先ほどからずっと流されていたのか、沖田さんが銀ちゃんの横までやってきた。そして銀ちゃんの呟いた言葉に対し、適切な答えを述べると再び流れていった。(何だよ今の)





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