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『んで?このまま銀ちゃんの子供と認知されて皆にあやされるのは嫌だと感じて逃げ出した銀ちゃん。どーして私まで連れてくるわけ?』
あれから、私達は家から離れて街をブラブラと歩いていた。
「お前が一番子守慣れてんだから、俺が親を探してる間にだな…」
『とか言ってホントは銀ちゃんの子供なんじゃないの?そろそろ白状しなよ〜』
「まだ疑ってんのか!」
『だって…ねェ?』
私は腕の中の赤ん坊を見遣ると、すぐさま銀ちゃんと見比べた。
『そっくりすぎて』
「だから…ホントに違うんだって。あのさァ、俺がなまえ以外の女と子作りなんかする訳ねーだろ」
『私だって銀ちゃんと子作りなんかする気ないよ。……ん?』
話の折り合いがつかないまま、駄菓子屋の前までやってくると、店の前のベンチに見慣れた隊服の男が変なアイマスクをつけて寝ているのが見えた。
「何?捨て子?」
変なアイマスクをつけて寝ていたのは沖田さんだった。真選組なら捨て子をどうにかしてくれそうだと、銀ちゃんが沖田さんの元へと駆け寄り、事の経緯を説明した。
「ああ。家の前に捨てられててな。そりゃびっくりしたよー。まァそーいう事で、後はお前らおまわりさんに頼むわ。ヨロシク」
『ちょっと銀ちゃん、そんな投げやりな…』
「そーですぜ、旦那」
とんとん拍子に話を進めて赤ん坊を無理矢理沖田さんへと押し付けようとした銀ちゃんに私が口を挟むと、沖田さんはゆっくりと立ち上がり何故か刀を抜いた。(えっ?なんで?)
「そんな事言って、実はなまえさん孕ませて出来た子じゃねーんですかィ?んで育てるのは厳しいって事で、なまえさんの反対を押し切って放棄しにきたってトコでしょう。俺に内緒で手ェ出しやがって。死んで下せェ」
『待って待って沖田さん!?勝手にとんでもない解釈してますけど全ッ然違いますから!!銀ちゃんも何か言わないとホントに死ぬよ!』
「やっぱ俺となまえの子だったのか…。そうならしょーがねェ。沖田くんさっきの話なしで。俺ガンバって育てるよ」
『オイお前ら人の話を聞け』
どうにか私は赤ん坊に無関係だと、沖田さんに必死に弁解すれば「分かってまさァ。本当なら話聞く前にまじで旦那の事殺してますよ」とあっさりと片付けられた。(じゃあややこしい茶番しないで欲しい)
「しかし、旦那の子供なのは濃厚でしょう。旦那とクリソツじゃありやせんか。特にこの死んだような目なんて瓜二つだ」
『ですよね。やっぱり腐ってる…』
「知らねーのお前。最近のガキは皆そーなんだよ。ゲームとかネット漬けで外で遊んでねーからさァ。病んだ時代だよ」
『病んだ時代の先発者が言えた台詞か』
「しかし、どこでこさえたガキか知りやせんが旦那もスミにおけねーな、コノコノ」
「沖田くん。それガキだから。旦那はこっちだ。ワザとやってるだろ、お前ワザとだろ」
「なまえさん。俺達も負けてられねェですねィ。子供作りやしょう」
『何の対抗意識?』
「沖田くん、次きみ斬られる方ね」
「――冗談はさて置き旦那、自分で蒔いた種は自分で何とかしろって奴ですよ。女は腹抱えて子を産む。その分男は頭抱えて子を育てるのが筋ってもんでさ」
一通りの茶番の様な話が治ると、沖田さんは至って落ち着いた態度のまま、サラリと銀ちゃんに説き伏せた。(沖田さんてやけに言う事が大人というかおじさんというか)
「つー事で、俺も公務に忙しいんでこの話はこれで……」
そして、沖田さんが話を切り上げて再びアイマスクをつけベンチに寝そべるや否や、(てか今、公務に忙しいって言わなかったか?なのに何故アイマスクつけてベンチに寝そべったの?)銀ちゃんは沖田さんの側まで歩み寄ると、両手で沖田さんを抱え上げた。
「ん?」
ダバンッ!!
そしてそのまま、勢いよく側の川へと放り投げた。
「なんだ。なんで俺の周りは話を聞かねー奴ばかりなんだ?」
『そんなそっくりだったら、ねェ〜?』
「そんなに似てるか俺達?」
『激がつく程にクリソツだよ』