17
「くだらねー番組だな」
あれから数日後。定春の出来事がテレビで報道されていた。何気なく私と銀ちゃんがそれを見ていると、銀ちゃんは良いところでテレビを消した。
『そー?良いとこだったと思うんだけど』
「モザイクだらけだろ。AVじゃねーんだよ」
『…フフ。そうだね』
こんな事を言いながらも照れてるだけなんだろう、と私は笑みを溢して机に置かれていた煎餅を一つ頬張った。その時、煎餅の器の後ろに犬語翻訳機がちらりと顔を覗かせているのが見えた。
『あ、コレ』
「ん?…まだ捨ててなかったのか、このガラクタ」
「銀さーん、なまえちゃーん。早くしないと置いてきますよ」
二人で翻訳機を手に取り覗き込んだところで、先に玄関で定春の散歩の用意をしていた新八くんから声がかかる。
「はいよ〜」
ポイッ
『…ちゃんとポリ袋持ったー?』
銀ちゃんはその声に立ち上がると同時に、傍にあったゴミ箱へ翻訳機を捨てた。私はそれを見ると、(…皆にはもう必要ないもんね)なんて考えながら再び笑みを溢した。
「マナーを守れない奴にペット飼う資格はねーぞ」
『銀ちゃんがそれ言うー?ね、定春』
「ワン」
「うっせ。わんじゃねーよ」
ピッ
『!…いってきます』
定春の鳴き声にゴミ箱の中の翻訳機が反応し、私は【ありがとう】と書かれた文字が見えると、思わず笑ってしまった。そして、定春の散歩へと向かう為、家から足を踏み出した。